研究課題
非線形偏微分方程式の粘性解理論において、連続問題と離散問題をつなぐ理論を構築することで、各々の問題に新たな理解を与えることを目的としている。具体的には、連続問題の適切な離散化や、その応用として、極限的に得られる粘性解の性質を導くことなどを議論する。またこの解析のための土台となる、適切な解概念の導入と一意存在性の確立、長時間挙動などの解の諸性質の解明を通して、種々の非線形偏微分方程式に数学的な基礎を与えることも同時に目指す。令和元年度は、次のことを研究した。(1)動的境界値問題の決定的離散ゲーム解釈、特に、完全非線形方程式のゲーム解釈の応用について:前年度までに導入した、完全非線形(非特異・退化)放物型方程式の動的境界値問題に対する、粘性解の離散ゲーム解釈の応用を引き続き考察した。特に、他の境界値問題との関係や、漸近問題として現れる楕円型問題の解への収束などを議論し、一連の成果を論文にまとめた。本研究は、福岡大学の柳青氏との共同研究である。(2)高木関数を初期値とするハミルトン・ヤコビ方程式の粘性解の挙動、特にその自己アフィン構造について:高木関数自身が持つある種の自己アフィン構造が、時間遅れを伴う形で、ハミルトン・ヤコビ方程式の粘性解に遺伝されるという性質を前年度までに明らかにしていた。今年度、ハミルトンフローをより直接的に調べることにより、この性質の新たな証明を与えた。さらに、この時間遅れ自己アフィン性が成り立つ時刻の上限を特定し、成果を論文にまとめた。本研究は、富山大学の藤田安啓氏・山口範和氏と共同で遂行した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件)
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