研究課題/領域番号 |
16K17622
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高棹 圭介 京都大学, 理学研究科, 特定准教授 (50734472)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 平均曲率流 / フェイズフィールド法 / 弱解 / 幾何学的測度論 / 変分問題 / 特異極限問題 / 極小曲面 / バリフォールド |
研究実績の概要 |
平均曲率流方程式は、金属の焼きなまし時における金属粒界の動的モデル方程式として知られ、3種類以上の金属粒が存在する場合には、金属粒界にジャンクションが発生しうる。ゆえにジャンクションを含む平均曲率流の解析は、焼きなまし現象の数学的解明の重要課題であるといえる。当該年度では主に、以下の研究結果を得た。 (1)適切な条件下では、解がジャンクションを含むような平均曲率流方程式は適当な境界条件を課した平均曲率流方程式の連立方程式としてみなすことが出来る。ゆえに前年度に引き続き、境界条件付きの平均曲率流方程式に関してフェイズフィールド法を中心とした解析を行った。研究代表者は、研究協力者の儀我美一氏、尾上文彦氏とともに、ディリクレ境界条件、もしくは力学的境界条件を課したAllen-Cahn方程式に対して、特異極限に関するある種の仮定を課したときに、Allen-Cahn方程式の解の特異極限が、対応する境界条件付きの平均曲率流方程式のBrakkeの意味での弱解に収束することを示した。ここで特異極限に関する仮定とは、Allen-Cahn方程式のエネルギーから導出される曲面の近似測度に関して、ディリクレエネルギーとポテンシャルエネルギーの特異極限が領域の境界上で一致することを意味しており、これは領域内部では既に知られている性質である。この結果は現在論文を準備中である。 (2)ジャンクションを含む平均曲率流に対応する連立Allen-Cahn方程式の考察を行った。連立方程式から導出されるエネルギーによって定義される曲面の近似測度の密度が一定であるという仮定の下では、方程式の解の特異極限がジャンクションを含む平均曲率流のBrakke解に収束することを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に沿った方向に研究が進んでいるわけではないものの、成り立つことが期待される仮定の下では興味深い結果が得られたため。特に、ノイマン境界条件以外の境界条件を課した平均曲率流方程式のBrakke解に対しての定式化を行ったことは先駆的であるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
当該年度に得られた結果では測度の特異極限に対してある種の仮定を課している。今後は、この仮定に関して、どのような条件下ではこの仮定が満たされているのか、また、この仮定を満たさない場合は存在するかについて考察を行いたい。さらに、平均曲率流の導出の元となった物理現象である金属結晶の粒界の運動に関して、より物理的なモデルを考察する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題に深く関連する研究集会は国外で開催されるものが多い。当初の予定では年度末にいくつかの国内の研究集会に参加する予定であったものの、当該年度の後半に、次年度開催予定の研究集会の情報を入手したため、当該年度に使い切るのではなく次年度使用額として国外の研究集会参加の旅費に充てることが本研究課題の更なる推進につながると判断した。ゆえに、次年度使用額は国外旅費の一部として使用したい。
|