研究課題/領域番号 |
16K17624
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
岡本 葵 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (40735148)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 初期値問題 / 適切性 / 非適切性 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、次の3つの成果を得た。1つ目は、空間1次元ディラック・クライン・ゴルドン方程式系の初期値問題の非適切性に関する結果である。解写像が2階連続微分可能でないことが示されていた初期値のソボレフ指数の範囲において、解写像が不連続になることを示した。強い非線形相互作用がディラック方程式の非線形項において表れることに着目し、クライン・ゴルドン方程式の非線形項が消えるような対称性を持つ初期値を用いて考察を行った。ディラック・クライン・ゴルドン方程式系でも2階連続微分可能性の破綻が解写像の不連続性を導くことを明らかにした(町原秀二氏(埼玉大学)との共同研究)。 2つ目は、次元縮約したチャーン・サイモンズ・ディラック方程式系の適切性・非適切性の分類を行った。数学的モデルについては、既に得られていたが、物理的な意味づけが可能なモデルであっても、適切となる領域が非凸となることを示した(町原秀二氏(埼玉大学)との共同研究)。 3つ目は、ブジネスク方程式やカワハラ方程式などを含む、非線形分散型方程式の非適切性に関する結果を得た。非適切性では、解写像が原点において不連続であることを示していることが多いが、初期値のノルムが小さくても、対応する解のノルムが大きくなるノルムインフレーションと呼ばれる現象が発生する場合には、すべての初期値において、解写像が不連続となることを証明した。また、この手法を若干修正することにより、非線形項に微分を含むカワハラ方程式においても、小さな指数を持つソボレフ空間に属するすべての初期値に対して、解写像が不連続、特に、ノルムインフレーションが発生することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ディラック・クライン・ゴルドン方程式やカワハラ方程式などの非適切性が得られ、やや一般的な形で非適切性の結果をまとめることができたため。なお、ディラック・クライン・ゴルドン方程式では、クライン・ゴルドン方程式の非線形項に起因する相互作用の制御に課題が残っている。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に進展しているため、引き続き非線形波動方程式の適切性の研究に取り組む。平成28年度の研究で課題として残ったディラック・クライン・ゴルドン方程式におけるクライン・ゴルドン方程式の非線形項に起因する相互作用を制御できるよう研究を進める。
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