平成30年度の研究では、次の3つの成果を得た。 1つ目は、5階修正コルトヴェーグ・ドフリース型方程式における漸近挙動の解明である。平成29年度に行った短パルス方程式の研究で用いた波束テスト法を5階修正コルトヴェーグ・ドフリース型方程式に適用できるように発展させた。修正コルトヴェーグ・ドフリース方程式では、解の漸近挙動は自己相似解、特に、パンルヴェ方程式の解で与えられることが知られていた。本研究により、5階のモデルでも対応する常微分方程式の解で与えられる自己相似解が漸近形の主要部であることを示した。 2つ目は、消散型波動方程式のL^p-L^q評価式を証明し、その評価式を用いて、臨界な非線形項を持つ非線形方程式の初期値問題の時間大域的可解性が得られることを示した(池田正弘氏、戍亥隆恭氏、若杉勇太氏との共同研究)。本研究では、初期値の遠方での減衰を弱め、対応する線形解の時間減衰が遅い場合について考察した。また、解の存在時間の評価も行った。 3つ目は、非線形項が多項式でないような非線形項を持つ非線形シュレディンガー方程式において、初期値を確率化した初期値問題を考察した。特に、5,6次元においてエネルギー臨界の場合に、エネルギークラスよりも広い初期値でほとんど確実に時間大域的な可解性が得られることを示した(Tadahiro Oh氏、Oana Pocovnicu氏との共同研究)。なお、エネルギー臨界な非線形項では、6次元に比べて5次元での非線形項の次数が高いため、エネルギー評価式において困難が生じ、時間大域的可解性が得られる指数の範囲は5次元のほうが若干狭い。
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