研究課題/領域番号 |
16K17625
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
若杉 勇太 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (20771140)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非線形消散型波動方程式 / 時間大域的適切性 / 解の爆発 |
研究実績の概要 |
集約的非線形項をもつ消散型波動方程式に対して,初期値問題の時間大域的適切性,解の漸近挙動および有限時間爆発について考察を行った.京都大学の池田正弘氏,戍亥隆恭氏の協力のもと,特に臨界指数とよばれる,小さな初期値に対する時間大域解の存在・非存在の閾値が,初期値の空間遠方での減衰度からどのように決まるのか,という問題に取り組んだ.先行研究ではルベーグ空間での初期値に対する研究が行われていたが,線形評価における指数の制限から,低い空間次元でのみ臨界指数が決定されていた.そこで我々は,重み付きSobolev空間の初期値に対してはより広い指数での線形評価が成立することに着目し,これを用いることにより,全ての空間次元で臨界指数の決定を行った. さらに,解の長時間挙動について,初期値の遠方での減衰が遅い場合は,解の漸近形は初期値のみから定まり,非線形項の影響が現れないことを示した.これは非線形項は解自身に比べて空間遠方での可積分が上がることで,解の非線形部分の減衰が線形部分に比べて速くなることに起因するものと思われる. また,劣臨界指数における解の有限時間爆発および,解の最大存在時間の評価についても,上下からのほぼ最良な評価が得られている. また信州大学の岡本葵氏の協力のもと,ルベーグ空間における線形評価についても,微分の損失のオーダーまで込めた最良の評価を導出できており,今後の研究に役立てられると期待している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大域挙動解析の基礎となる,小さい初期値に対する時間大域解の存在については広いクラスの初期値に対して十分な成果が得られている.また解析手法の最も基礎的な部分である線形評価についても,微分の損失のオーダーまで込めた最良な評価を導出できている.しかしながら目標であるエネルギー臨界の非線形問題への応用はまだできていない.よって総合的にみて,やや遅れているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず現在までに得られている線形評価を用いてStrichartz型評価を導出し,エネルギー臨界の非線形性をもつ場合に初期値問題の時間局所適切性を示す.それをもとに凝集コンパクト性の議論から,基底状態解のノルムが解の大域挙動の閾値になることを示す.また並行して,今回得られた線形評価の応用としてルベーグ空間の枠組みでの臨界指数問題を考える.特に臨界の場合の時間大域的適切性について考察する.
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