研究課題
一様等方な宇宙のモデルである,FLRW(Friedmann-Lemaitre-Robertson-Walker)時空における非線形波動方程式に対し,時間大域解の存在・非存在を分ける非線形性の閾値となる臨界指数を決定する問題について研究を行った.この問題は,一様等方な時空のもとで非線形の波動がどのように振舞うのかを明らかにするために重要な問題である.Euclid空間における非線形波動方程式に対しては,Strauss指数とよばれる指数が臨界指数となることが知られているが,FLRW時空における臨界指数がどのような値になるかは未解決である.Euclid空間の場合は,解表示などを用いた線形解の詳細な挙動を得ることができるが,FLRW時空における問題では,方程式の線形部分に時間変数に依存する係数が現れるため困難が生じる.そこで,本研究ではこの問題に取り組むため,まず解の有限時間爆発の問題について研究を行い,対応する常微分不等式に対する解の爆発を示す一般化された加藤の補題を用いることにより,以下の成果を得た(津田谷公利氏との共同研究).(1) 解が対応する放物型方程式の解に近い振る舞いをする場合に,臨界および劣臨界の場合の解の有限時間爆発および,最大存在時間の上からの評価を与えた.(2) 時空が加速膨張する場合を考察し,この場合には臨界指数が現れず,任意の非線形項の指数に対して解の有限時間爆発が起こることを証明した.また,解の最大存在時間の上からの評価を与えた(国際誌に投稿中).(3) 微分型の非線形項をもつ場合に,臨界および劣臨界の場合の解の有限時間爆発および,最大存在時間の上からの評価を与えた(国際誌に投稿中).
2: おおむね順調に進展している
FLRW計量をもつ非線形波動方程式に対して,放物型に近い場合,加速膨張の場合,微分型の非線形項をもつ場合での解の有限時間爆発の結果を得るなど大きな進展が見られた.よっておおむね順調に進展しているといえる.
今後は残された場合である de Sitter 時空における非線形波動方程式に対し,解の有限時間爆発および,最大存在時間の評価を得る問題に取り組む.
新型コロナウイルス感染拡大の影響により,予定していた研究集会や研究打ち合わせの予定をキャンセルしたことに伴い次年度使用額が生じた.次年度使用額に ついては,前年度で延期とした研究集会への参加および研究打ち合わせに用いる.なお本研究課題について翌年度分として請求した助成金はない.
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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