本研究課題の内容に関する主要な目的は前年度までに概ね達成したが、令和元年度末からの新型コロナウィルス感染拡大に伴う研究成果発表の予定変更に伴い、今年度に研究計画を延長した。今年度は次の研究課題に向けた準備的内容に注力した。 音響波動方程式型の定常散乱理論に対してこれまで得られた非散乱エネルギーに関する知見をもとに、シュレーディンガー型方程式の定常散乱理論の場合に対する研究に着手した。シュレーディンガー型方程式に対しては、音響波動方程式の場合と若干技術的な差異はあるが、概ねこれまで得られた結果と同様のことが成り立つことが分かった。特に、非散乱エネルギーのワイル型評価は、摂動領域におけるシュレーディンガー作用素のディリクレ固有値分布から得られる。また、シュレーディンガー作用素の共鳴極との関係も示唆されつつある。共鳴極と非散乱エネルギーには、分布の漸近挙動やその位置関係について、何らかの定性的あるいは定量的な関係があると思われるが、これについての詳しい数学的解析は、今後の課題である。
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