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2016 年度 実施状況報告書

退化型準線形波動方程式の解の挙動の分類

研究課題

研究課題/領域番号 16K17631
研究機関東京理科大学

研究代表者

杉山 裕介  東京理科大学, 理学部第一部数学科, 助教 (30712161)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード非線形偏微分方程式 / p-system / 準線形波動方程式 / 圧縮性Euler方程式 / 方程式の退化 / 解の爆発 / リーマン不変量
研究実績の概要

1.空間1次元準線形波動方程式のコーシー問題に対して解の挙動の分類を行った。2×2双曲型保存則系で書ける弾塑性材内の密度波を記述するモデルについては、有限時間における「方程式の退化」が起こるための十分条件を与えた。「方程式の退化」とは、主要部の係数が未知関数に依存するような準線形波動方程式において、未知関数が大きく動き、波動方程式としての構造を崩す現象である。時刻0でのリーマン不変量の単調減少性を仮定した場合、初期速度の積分量に対して、有限時間における方程式の退化が起こるか否かを分ける閾値を決定した。
2.時刻0でのリーマン不変量の単調減少性が時間発展に伴って伝播しつつ、保存則系の構造を持たないいつくかの方程式に対しても有限時間における「方程式の退化」が起こるための十分条件を与えた。特に保存則系としての構造が崩れたときに上述のような閾値は存在せず、リーマン不変量の単調減少性のみで有限時間での「方程式の退化」が起こるという結果を得た。
3.変数係数摩擦項付き1次元圧縮性オイラーの解に対して有限時間における解の爆発が起こるための十分条件を与えた。摩擦項が時間変数にのみ依存した場合の問題は、いくつかの既存の研究の改良が行った。例えば、リーマン不変量に関する新しい評価を用いることで、初期値の空間無限遠方での挙動に関する仮定を弱めることができ、さらに摩擦項の係数の時間減衰の速さに応じて小さな初期値に対する解の爆発時刻の適切な評価も与えた。摩擦項の係数が時間と空間変数に依存する問題は、これまで全く研究がなかったが、摩擦項の係数の時間または空間減衰がある程度速い場合に摩擦項としての効果が弱まり、初期値が小さくても解の爆発が起こることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初期速度の総積分量を保存するp-systemで書けるような1次元準線形波動方程式の古典解の解析については、初期速度の総積分量が方程式の退化が起こるか否かを分ける閾値をとる場合の解の挙動の問題が残されてしまったが、実績の概要2で述べた通り、保存則系として構造が崩れた関連方程式の方程式の退化に関して、保存則系の構造の崩れが閾値の消失に繋がる興味深い結果が得られた。杭州師範大学のYunguang Lu教授がこれらの研究に興味を持ち、古典解の枠組みを弱解へと広げる研究を共同で行うにことになった。弱解の研究は、平成29年度を行う予定であったが、彼のCompensated Compactness Methodの知識のおかげで、前倒しで行えることとなった。さらに関連する方程式として、変数係数摩擦項付きオイラー方程式についても既存の結果の改良やこれまで手つかずだった問題に着手できた。よって総合的に見て、おおむね順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

今年度の研究は、古典解の枠組みで行われていたが、平成29年度からは、これまで得られた成果を弱解の枠組みへと広げていく。これによって「方程式の退化」が起きた後の解の延長の問題などを考えることが可能になる。この研究は、前述の通りすでに杭州師範大学のYunguang Lu教授との共同研究という形で始まっている。まずは、時刻0におけるリーマン不変量の単調減少性を仮定し、古典解に対して得られていた成果を弱解の枠組みへと拡張する問題を考えている。弱解に対しては、特性曲線の方法が機能しない点が証明の障壁になることが分かっているが、リーマン不変量の性質とCompensated Compactness Methodを使うことで方程式を退化させない時間大域的弱解の存在と退化後の解の延長という問題の解決への道筋がついている。
変数係数摩擦項付き1次元圧縮性オイラーの研究において、新たに生じた問題についても研究を行っていく。つまり摩擦項の係数が時間と空間変数に依存し、その係数の時間または空間変数についての減衰が速過ぎない場合、摩擦項が効果的に機能し小さな初期値に対する時間大域解が一意に存在し、さらに時間無限大において対応する放物型偏微分方程式の解へと漸近するという予測を証明することを目標とする。

次年度使用額が生じた理由

研究に必要な備品や書籍の購入を所属機関の個人研究費で一部行ったため。

次年度使用額の使用計画

29年度5月に中国 杭州師範大学へ出張予定が新たに出来たので、そこに補填する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] 杭州師範大学(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      杭州師範大学
  • [雑誌論文] Large time behavior of solutions to 1D quasilinear wave equations2017

    • 著者名/発表者名
      杉山裕介
    • 雑誌名

      RIMS Kokyuroku Bessatsu

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Degeneracy in finite time of 1D quasilinear wave equations2016

    • 著者名/発表者名
      杉山裕介
    • 雑誌名

      SIAM J. Math. Anal

      巻: 48 ページ: 847-870

    • DOI

      10.1137/15M1016369

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Asymptotic expansion of solutions to the drift-diffusion equation with fractional dissipation2016

    • 著者名/発表者名
      山本征法、杉山裕介
    • 雑誌名

      Nonlinear Analysis Series A: Theory, Methods & Applications

      巻: 141 ページ: 57-87

    • DOI

      10.1016/j.na.2016.03.021

    • 査読あり
  • [学会発表] Blow-up and lifespan for the 1D Euler equation with time-dependent damping2017

    • 著者名/発表者名
      杉山裕介
    • 学会等名
      Critical Exponents and Nonlinear Evolution Equation 2017
    • 発表場所
      東京理科大学
    • 年月日
      2017-02-20 – 2017-02-20
    • 招待講演
  • [学会発表] Degeneracy in nite time of 1D quasilinear wave equations2016

    • 著者名/発表者名
      杉山裕介
    • 学会等名
      Workshop on Partial Differential Equations
    • 発表場所
      杭州師範大学 中国
    • 年月日
      2016-10-19 – 2016-10-19
    • 招待講演
  • [学会発表] あるパラメータ準線形波動方程式の有限時間における退化2016

    • 著者名/発表者名
      杉山裕介
    • 学会等名
      日本数学会 秋季総合分科会
    • 発表場所
      関西大学
    • 年月日
      2016-09-17 – 2016-09-17
  • [学会発表] Degeneracy in nite time of 1D quasilinear wave equations2016

    • 著者名/発表者名
      杉山裕介
    • 学会等名
      Mathematical Analysis for Stability in Nonlinear Dynamics ‐in honor of Professor Vladimir Georgiev on his 60th birthday-
    • 発表場所
      北海道大学
    • 年月日
      2016-08-24 – 2016-08-26
  • [学会発表] Degeneracy in finite time of 1D quasilinear wave equations2016

    • 著者名/発表者名
      杉山裕介
    • 学会等名
      XVI International Conference on Hyperbolic Problems Theory, Numerics, Applications
    • 発表場所
      アーヘン工科大学 ドイツ
    • 年月日
      2016-08-04 – 2016-08-04
  • [備考] 東京理科大学 教員プロフィールのページ

    • URL

      https://www.tus.ac.jp/fac_grad/p/index.php?6871

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公開日: 2018-01-16  

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