最終年度の実施した研究の成果について. 杭州師範大学のYunguang Lu氏と弾性体内の密度波を記述する準線形波動方程式の弱解の存在と非存在に関する論文が出版された。この年度は、退化後の解の延長に関する研究を取り組んだ。初期時刻おいて一様に退化する初期位置を選び、正定数よりも大きな初期速度を取れば、滑らかな解の存在するということがわかった。これは退化型双曲型方程式の解の存在における新しい結果である。 変数係数摩擦項を持つ空間1次元オイラーに対して、初期データに無限遠における条件を一切かさずに一定の滑らかさと有界性のみで解の存在、一意性、解の導関数の時間減衰評価を証明した。時間減衰評価は、摩擦項の効果が強くなれば減衰率が高くなるというエネルギー法で得られていた既存の結果とは、異なる新しい結果である。 研究機関全体を通じて実施した研究の成果について. この研究の動機づけとなった申請者の2016年に出版された論文に興味もったYunguang Lu教授に招聘していただき中国の数学者たちとのつながりができ、研究を大きく進展させることができた。より具体的には、双曲型保存則系としての構造を持たないが、物理的に重要なエネルギー保存則を満たす準線形波動方程式について、方程式の退化が起こるための条件を決定した。その条件は、保存則系のそれとは異なっていた。これまでの論文においては、証明が特性曲線の方法に依っており、滑らかでない解を扱うことができない。杭州師範大学のYunguang Lu教授との共同研究において、ある初期値に関する強い条件のもとでの時間大域的弱解の存在と非存在を証明した。 空間1次元変数係数摩擦項付きオイラー方程式の研究を開始し、これまでの研究で仮定されていた初期値の無限遠での条件を緩和もしくは完全に取り除きながら、解の爆発(特異典型性)や時間大域解の存在を証明した。
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