研究課題/領域番号 |
16K17632
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
近藤 信太郎 岐阜大学, 工学部, 准教授 (60726371)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プラズマ / 非線形偏微分方程式 |
研究実績の概要 |
プラズマ中には、磁場による異方性のためほぼ2次元的な渦運動が起こることが知られているが、その現象を渦度輸送方程式に電流の効果と密度の不均一性の効果を付加した形で定式化したものがHasegawa-Wakatani方程式である。この方程式は、プラズマ中のドリフト波や気象におけるロスビー波を記述するCharney-Hasegawa-Mima方程式に、プラズマ抵抗値の効果を加えた形で一般化した方程式である。ここで、プラズマ現象のモデル方程式と、気象のモデル方程式として、同一のCharney-Hasegawa-Mima方程式というものが存在することを奇異に感じるかもしれないが、同一のモデル方程式が現れる理由は次の通りである。外部からかけられた強い磁場が存在するとき、プラズマ中の荷電粒子にはローレンツ力が働き磁力線にまきつくような運動が生じる。他方、地球の大気には、自転によって生じるコリオリ力が働はたらく。ローレンツ力とコリオリ力はどちらも粒子に対して回転軸のまわりに回転させる力を作用させるという点が共通している。 Hasegawa-Wakatani方程式に対する物理系の先行論文によって、平衡密度に勾配があるとき、その勾配と一様磁場の双方に垂直方向に帯状流と呼ばれる流れが形成されて、乱流を抑制することが明らかにされている(R. Numata, R. Ball and R. L. Dewar, Phys. Plasmas, 14 (2007), article 102312.)。本研究の着想は、基本的にその先行論文に依存している。本年度は、空間2次元の場合に、イオンの温度ゆらぎを未知関数に含む一般化Hasegawa-Wakatani方程式の初期境界値問題に対する時間局所解の一意存在の証明、時間大域解の存在証明の計算を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では、イオンの温度ゆらぎを未知関数に含む一般化Hasegawa-Wakatani方程式として、Z. Chang and J. D.Callen, Phys. Fluids B4 (1992), pp 1182-1192.の論文中で提案されているモデル方程式を採用することを考えた。そのモデル方程式は、静電ポテンシャル、密度ゆらぎ、温度ゆらぎの3変数の連続体モデルであり、そのモデル方程式を用いるという考えに基本的に変更はない。ちなみに、その論文ではモデル方程式に運動論的効果を取り組むことが提案されているが、本研究では運動論的効果は考えないことにした。その理由は、運動論的効果を考えると、プラズマ中に帯状流が形成されることを数学と数値計算を用いて理解するという目標が達成できないと思われるからである。研究が遅れた理由は、研究対象とするモデル方程式に関する物理系の先行論文を調べて、どのような解析が行われているのかを知る必要があったからである。 空間2次元の場合に、時間局所解の一意存在証明と、時間大域解の存在証明に関しては計算がうまくいく目途が経った。現在、計算のチェックを進めると同時に論文に結果をまとめているところである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、イオンの温度ゆらぎを未知関数に含む一般化Hasegawa-Wakatani方程式を用いて、プラズマ中に帯状流が形成されることを数学と数値計算を用いて理解することを目標としている。そのため、物理系の論文で用いられている解析手法や数値計算手法を理解することが必要条件であるが、そのためには単に時間をかけるだけでなく、プラズマ物理の専門家との研究討論が必要不可欠である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を論文にまとめる作業が遅れており、当初計画していた出張を次年度に行うことにしたため使用額に変更が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果を研究集会で発表するときの旅費と、プラズマ物理の専門家と研究討論をするための旅費に使用する予定である。
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