研究実績の概要 |
プラズマ中には、磁場による異方性のためほぼ2次元的な渦運動が起こることが知られているが、その現象を渦度輸送方程式に電流の効果と密度の不均一性の効果を付加した形で定式化したものがHasegawa-Wakatani方程式である。この方程式は、プラズマ中のドリフト波や気象におけるロスビー波を記述するCharney-Hasegawa-Mima方程式に、プラズマ抵抗値の効果を加えた形で一般化した方程式である。外部からかけられた強い磁場が存在するとき、プラズマ中の荷電粒子にはローレンツ力が働き磁力線にまきつくような運動が生じる。他方、地球の大気には、自転によって生じるコリオリ力が働く。ローレンツ力とコリオリ力はどちらも粒子に対して回転軸のまわりに回転させる力を作用させるという点が共通している。 Hasegawa-Wakatani方程式に対する物理系の先行論文によって、平衡密度に勾配があるとき、その勾配と一様磁場の双方に垂直方向に帯状流と呼ばれる流れが形成されて、乱流を抑制することが明らかにされている(R. Numata, R. Ball and R. L. Dewar, Phys. Plasmas, 14 (2007), article 102312.)。昨年度は、空間2次元の場合に、イオンの温度ゆらぎを未知関数に含む一般化Hasegawa-Wakatani方程式を周期境界条件で考えて、時間大域解の一意存在の証明を行った。 核融合プラズマの研究への応用だけを考えるのではなくて、太陽プラズマの研究への応用を考えたときに、太陽は重力が強いため熱対流の効果を考えることが重要である。実際、太陽の表面には対流現象がみられる。そこで、本研究では、昨年度考えたモデル方程式に対して熱対流の効果を付加した拡張モデルを考えて、時間大域解の一意存在の証明を行った。
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