研究課題/領域番号 |
16K17633
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
石田 敦英 東京理科大学, 工学部教養, 講師 (30706817)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 分数冪ラプラシアン / 逆散乱問題 / 波動作用素 |
研究実績の概要 |
斥力項を持つハミルトニアン(リパルシヴ・ハミルトニアン)の支配する量子力学系の下で、相互作用ポテンシャルの減衰条件の閾値、すなわち短距離型と長距離型の境界についての研究成果が出版された。これを受け、申請書記載の研究計画の通り、ロシアのサンクトペテルブルクおよびアメリカのアトランタにて研究成果発表を行った。またその他招待講演を含め、国内においてもいくつかの成果発表を実施した。 一方で、通常のシュレディンガー作用素を分数冪とした分数冪ラプラシアンについて研究も大きく進展した。具体的には、エンス氏によって1983年に得られたシュレディンガー作用素についての伝播評価を分数冪の場合に拡張することに成功し、さらにその評価を相互作用ポテンシャルの一意性を決定する逆散乱問題へと応用を果たした。エンス氏は停留位相法による部分積分を用いて伝播評価を得ていたが、今回得られた伝播評価はエンス氏の手法とは異なり、擬微分作用素の漸近展開によって成される。相互作用ポテンシャルの一意性については、1995年にエンス氏およびヴェーダー氏によって発案されたエンス・ヴェーダーの方法に基づく。上で述べた伝播評価を用いて、短距離型と呼ばれる空間遠方での減衰がある程度速い相互作用ポテンシャルを扱った。この逆問題においても擬微分作用素による漸近展開を駆使する点がポイントとなっている。これらの結果をまとめ上げ、ある国際誌に投稿し現在査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分数冪ラプラシアンについての逆散乱の研究結果が得られたことから、研究目的である散乱現象の作用素論的解明に前進をもたらし、おおむね順調と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
進展のあった分数冪ラプラシアンの逆問題については、特異性を持つ短距離型ポテンシャルや、空間遠方減衰の弱い長距離型ポテンシャルの下での解決へと更に深化させたい。また、当初の計画であった斥力項を持つハミルトニアンについての長距離理論の研究も継続して進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年8月上旬にロシアのサンクトペテルブルクにて開催された国際会議Operator Theory, Analysis and Mathematical Physicsに参加のため外国旅費を計上していたが、海外での研究成果発表のための学内の競争資金に採択され、こちらから支出したことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年7月にスロバキアのブラチスラバにて開催される国際会議Equadiffでの研究発表のための旅費として使用する予定である。
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