研究課題/領域番号 |
16K17633
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
石田 敦英 東京理科大学, 工学部教養, 講師 (30706817)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 分数冪ラプラシアン / 逆散乱理論 / 波動作用素 |
研究実績の概要 |
・自由シュレディンガー作用素は微分作用素として非負であり、その分数冪を考えることができる。この分数冪ラプラシアンの場合の、付加する相互作用ポテンシャルの一意性を議論する逆問題について、多くの講演を実施した(国内外招待講演5回)。本結果は前年度より研究が進展してきたものであるが、現在においてもある外国雑誌にて査読中である。 ・散乱現象を考察する場合、付加するポテンシャル関数は遠方で値が消えているものを想定する。その遠方での減衰がある程度速ければ波動作用素が存在し(短距離と呼ばれる)、遅ければ波動作用素は存在しない(長距離型と呼ばれる)という意味での閾値がある。例えば通常の自由シュレディンガー作用素の場合なら、多項式型の減衰として-1乗が閾値であることが古くから知られている。本年度、分数冪ラプラシアンの場合についても、その長距離型と短距離型の閾値は同様に-1乗であることを証明することができた。証明方法は、波動作用素が存在し得ないような具体的なポテンシャル関数を与え、波動作用素の存在を仮定して矛盾を導く。今回用いた手法は、Dollardが1971年に、自由シュレディンガー作用素に対してクーロン型相互作用が長距離型に属することを証明した際に考案したものに基づくものである。なお、本結果はEast Asian Journal on Applied Mathematicsにて出版される(オンラインにてすでに出版済み。雑誌としては5月)。また、この話題について3回の国内講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分数冪ラプラシアンについての散乱理論の構築にむけて、着実に進行している。また他の物理系によって記述される散乱現象のいくつかの話題も現在査読中である。よっておおむね順調と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
・分数冪ラプラシアンについての逆散乱を長距離型へと拡張したい。またクーロン型の特異性を許容するような計算方法も考察中である。 ・通常の自由シュレディンガー作用素に電場を印加したシュタルクハミルトニアンは以前より多くの研究者によって扱われてきた物理系であるが、逆問題としての新しい手法の開発を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
8月にリオデジャネイロにて開催されたInternational Congress of Mathematicians 2018での講演のため外国旅費を計上していたが、学内競争資金に採択され、支出する必要がなくなった。一方で、12月にサンチアゴにて開催されたInternational Conference Spectral Theory and Mathematical Physics STMP 2018に参加することになり、こちらの分を本年度分の予算から支出した。トータルとしてはおよそ180千円の繰越が生じたが、2019年度も、予算申請時には予定のなかったいくつかの海外での成果発表を計画しており、過不足なく使用する見込みである。
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