研究課題/領域番号 |
16K17633
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
石田 敦英 東京理科大学, 工学部教養, 講師 (30706817)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シュタルク効果 / 散乱の逆問題 / 波動作用素 / 分数べきラプラシアン / 時間減衰する調和振動子 / 相対論的シュレディンガー作用素 |
研究実績の概要 |
・電場を伴うシュレディンガー作用素はシュタルクハミルトニアンと呼ばれる。シュタルクハミルトニアンの支配する系においては、電場の影響によって粒子は加速度を持つため、通常のシュレディンガー作用素より空間減衰の弱い相互作用ポテンシャルの影響下でも散乱状態が生じる。Weder(1996)によって開始されたシュタルクハミルトニアンの下でのポテンシャルの一意性を決定する逆散乱の研究は、数多くの研究者によって引き継がれ進展を続けてきた。2019年9月に出版された論文では、2013年に研究代表者らによって緩められた一意性の決定できるポテンシャルの空間減数の指数をさらに引き下げることに成功し、国際会議2回、国内会議2回の成果発表を実施した(いずれも招待講演)。 ・数年前から研究を進めてきた、分数べきラプラシアンについての伝播評価と逆散乱の論文が受理され2020年2月に出版された。2019年度においても国内外合わせて5回の成果発表を行った。 ・調和振動子の支配する量子力学系では、粒子は束縛状態のみを形成し散乱状態を生じることはない。しかし空間変数2乗の項に時間減衰する係数をかけると、その時間減衰のオーダーの大きさによっては散乱状態が引き起こされることを解明した(愛媛大学の川本昌紀氏との共同研究)。特に散乱状態を保証する波動作用素が存在するためのポテンシャルの空間減衰の条件を完全に決定することができた。本研究結果はすでに学術雑誌に受理されており、2020年6月に出版予定である。 ・昨年度、分数べきラプラシアンの量子系の下での波動作用素の存在および非存在に関する論文が出版されたが、相対論的の場合のべきが除かれていた。本年度は質量を持つ相対論的シュレディンガー作用素について同様の考察を行った。本研究結果もすでに査読は済んでおり出版準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
シュタルク効果の下での逆問題、分数べきラプラシアン(相対論的シュレディンガー作用素も含む)、時間減衰する調和振動子の三つの研究が並行して進展した。これらに関して2019年度は4報の論文が受理され、当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
・通常の波動作用素が存在できるような空間遠方の減衰を持つポテンシャルは短距離型と呼ばれ、減衰が弱く波動作用素が存在しないようなポテンシャルは長距離型と呼ばれる。シュタルク効果の下での逆散乱問題に関しては、2019年度の研究成果によって、短距離型については完全解決に至ったが長距離型については一部未解決部分を残している。今後はこの長距離型の完全解決を目指す。 ・2020年出版となった分数べきラプラシアンの逆問題の研究結果においては、ポテンシャルはある程度滑らかな短距離型のみを扱った。現在は特異性を持つものや長距離型も含むような形で研究を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年1月に学習院大学にて開催された国際研究集会に、関西からの研究者を1名招聘するため確保していた予算に余剰が生じ20千円ほどの繰越となった。継続して進展中の研究もあるので、翌年度に延長して無駄なく使用する。
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