研究課題/領域番号 |
16K17634
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
下條 昌彦 岡山理科大学, 理学部, 講師 (40588779)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Fast Diffusion 方程式 / リッチ流 / 対数拡散方程式 / 特異被食・捕食系 / シャドウシステム / 自己相似性 |
研究実績の概要 |
交付申請書に記載した研究テーマについては概ね順調に研究が進展した.また,新たな研究テーマについても成果が得られた. 1.対数型拡散方程式について柳田英二教授(東京工業大学),Peter Takac教授(Rostock大学)と共同研究を行い,flux条件を課した任意の解の漸近挙動を解明した.具体的には任意の解に自己相似スケーリングを施すと進行波に収束することを証明した.本研究の醍醐味は対数拡散方程式に対する交点数理論を構築したこと,およびリッチ流の微分幾何的な議論を縦横無尽に駆使した点にある.この成果は学術誌に投稿済みである. 2.特異点の解析という観点から,Jong-Shenq Guo教授(淡江大学),Arnaud Ducrot(ボルドー大学)と特異性をもつ被食・捕食モデルに対する反応拡散方程式の研究を開始した.この数理モデルは数理生態学で生物の有限時間での絶滅現象を記述する方程式として,近年注目を浴び始めていたが解析が困難なため,特に拡散係数が異なる場合,数学的な結果は何も得られていなかった.本研究では,まず2つの未知関数に関する拡散係数が大きく異なるシャドウ系を扱い,時間大域解の漸近挙動と有限時間での消滅解の存在に関する結果を得た。またそれを拡張してオリジナルのシステムに対しても,拡散係数が異なる場合に時間大域解の定常解への収束を証明した.これにより拡散係数が異なる場合に対する最初の突破口を開くことが出来た.この成果は学術誌に受理されている. 3.投稿していた曲率流の自由境界問題に関する2編の論文が掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
対数拡散方程式の研究が順調に進んだのは7th Euro-Japan Workshop on blow-up という合宿形式の研究集会に参加して共同研究者の柳田英二教授と,昼夜を問わず数学の議論を行えたことが大きい.その前後の研究打ち合わせもあり,交点数理論など数学的に困難な部分が短期間で解決できた上,論文の執筆作業もスムーズに進んだ.特異被食捕食系の研究が順調に進んだのは,本研究予算を投資して,共同研究者のJong-Shenq Guo教授を岡山に学術講演会で招待したことが大きい.短期間で集中的に議論をして,本質的なアイデアの交換ができたため,その直後に一気に問題が解決した.
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今後の研究の推進方策 |
1.対数拡散方程式に関しては境界条件を退化させて,非対称性を入れるとquenchingのオーダーが自己相似解のそれよりも大きいと予想している.そのオーダーが実際にどれぐらいの大きさであるかは未知である.それを決定する.Hamiltonのスケーリングにより非自己相似解の分類を行う.また接合漸近展開など形式的計算も必要になると予想される. 2.特異被食捕食系の反応拡散方程式に関しては定常解への収束問題を解いたが,周期解への漸近や,quenchingに関しては未解明である.これらの問題を解決する.周期解の解析には可積分系の理論を習得することが不可欠であると想定している.現在はその情報収集と行っている. 3.本プロジェクト課題である曲率流,面積保存型や不均質媒質やネットワーク上の解析を行う.山辺流をFast-Diffusion方程式へ応用できるかも検討したい.
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