研究課題/領域番号 |
16K17635
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
柳 青 福岡大学, 理学部, 助教 (70753771)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 粘性解 / 曲率流方程式 / 微分ゲーム / ハイゼンベルグ群 |
研究実績の概要 |
(1)ハイゼンベルク群における完全非線形放物型方程式系の粘性解の存在と一意性理論およびゲーム理論による手法を確立した。ハイゼンベルク群は加法群でないため、通常のユークリッドの場合より解析が困難である。我々は粘性解理論を用い、ハイゼンベルク群における放物型方程式系の比較定理を証明できた。さらに、離散ゲームの手法をサブリーマン多様体まで拡張し、粘性解の構築に成功した。この研究に関する論文は国際ジャーナルに掲載される予定である。
(2)画像処理の数理モデルをより深く理解するため、曲率の冪乗による界面運動方程式を考察した。指数が0に近づく場合、レベルセット方程式の解の漸近挙動を明らかにし、前年度の研究よりさらなる進展を遂げた。特に、従来の曲率方程式の特異性に不連続性を加えた一般の非線形放物型方程式に対し、新たに定義された粘性解の一意存在定理の証明に成功した。一方、指数が無限大に近づく際に解の挙動も調べ、初期値が凸である場合と凸でない場合をそれぞれ考察し、解の収束定理および極限の特徴づけを得られた。これらの研究結果に関しては国内外で多数の研究発表を行った。
(3)微分ゲームの手法により動的境界条件付き非線形放物型方程式を考察した。特に、曲率流方程式の動的境界値問題に対して離散ゲームを構築し、その値関数が方程式の粘性解に収束することを示し、解の表現公式を与えた。これらの結果は北海道大学の浜向直氏との進行中の共同研究に基づくものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた研究課題について結果が得られ、主な研究目標が実現できた。特に、冪型曲率流方程式の漸近挙動に関する研究は予想通り進展し、得られた結果と手法が様々な数理モデルへの応用が期待できる。また、動的境界値問題に対してもゲーム理論による手法を確立でき、今後の研究を行うための道具を準備できた。
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今後の研究の推進方策 |
それぞれの研究問題に対して成果が得られたが、結果と手法にはまだ改良の余地があるため、新たな方法を考案する。指数無限大における冪型曲率流方程式の解の挙動については、初期値が凸でない場合を考察する。運動界面が空間一次元のグラフである場合は極限方程式の性質を明らかにできたが、画像処理などの分野に応用するため、その手法を一般次元そしてレベルセット方程式の場合に拡張する必要がある。また、動的境界値問題のゲーム論的解釈に関しては、得られた値関数の収束定理を用い、解の凸保存性や肥満現象などの幾何学性質を調べ、動的境界条件が解の挙動に与える影響について理解を深める。さらに、ハイゼンベルグ群における方程式の凸保存性に関連する問題として、関数の凸包の性質を考察する価値がある。従来のユークリッド空間の理論はハイゼンベルグ群に適用できないため、新たな定義と解析方法が必要である。以上の問題の解決を目指し、今後の研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 東北大学と京都大学に出張した際、先方が旅費を負担してくれたためである。 (使用計画) 次年度に行われる研究集会に参加するための旅費として使用する。
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