研究課題
工学、社会科学、産業の問題において、複雑な現象のモデルを不完全なもので済ませたり、誤差・欠損が含まれるデータを扱ったりすることがある。このような場合に所望の解を積極的な意図をもって選別・抽出できるようにするため、既知の物理制約や未知数の先見情報を適切に活用できる方法を考案する。そこで、数理的裏付けのある知識獲得を可能にするような固有値計算技術を構築する。平成30年度は、大規模疎な制約付き固有値問題を解くためにこれまで開発してきた周回積分に基づく手法の実装を用いて、計算機における比較実験評価を行った。本手法における計算時間のボトルネックは線形方程式の求解にある。効率的な求解のために、研究代表者がこれまで研究してきた前処理技術を施したクリロフ部分空間法を用いることができるが、係数行列の性質が悪いと線形方程式が数値的に解きにくくなることがある。この原因について理論解析を行い、その難しさを特徴付け、簡単なテスト問題に対して例証した。この成果の一部は論文誌に掲載された。一方、開発した手法を高次元データの分類問題へ応用した。データの一部に関する既存知識に基づいてデータ全体の特徴量を積極的に修正してクラス分類するための次元削減手法を考案した。人工的に作成したテストデータ及び実データに対して、従来の教師付き分類手法と比較性能して考案した手法が優れることを実験的に示した。この成果をまとめた論文は査読付き国際会議に採択された。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画に従って、前年度実装した制約付き固有値問題に対する周回積分を使ったアルゴリズム及び前処理付きクリロフ部分空間法のアルゴリズムを用いて計算機による従来法との比較評価実験を行った。本手法の部分問題である線形方程式に対する前処理付き反復法の収束性に関する成果は論文誌に掲載された。この手法を応用してデータ分類問題に対して教師付き機械学習手法を考案し、人工および実問題に対する数値実験で従来法との比較評価を行った。この成果をまとめた論文は国際会議録に採択された。
当初の計画に則って実装した手法を実問題に適用し、提案法と従来法の性質・性能の差異を明らかにする研究を行う予定である。他に、平成30年度は制約がない固有値問題に対する効率的な精度保証手法を考案したが、この手法を制約付き固有値問題へ今後応用することが考えられる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 6件) 図書 (1件) 備考 (2件)
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