研究課題/領域番号 |
16K17643
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
李 聖林 広島大学, 理学研究科, 助教 (50620069)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Phase-field method |
研究実績の概要 |
一つの細胞(受精卵)から始まって様々な細胞組織と器官を作り出す生命の発生過程は、自然界に おける自発的なパターン形成の典型例であると同時に、研究者にとっては最もチャレンジングな現象である。Notch-Deltaは、細胞同士の接触による側方抑制的な仕組みであり、細胞膜でリガンドとレセプターと呼ばれる、シグナルを与える蛋白質とシグナルを受け取る蛋白質が細胞接触を通じて結合し、細胞内にシグナルを送る。 本研究では、細胞の幾何学的構造を反映した上で、細胞外と細胞内、又は 細胞膜と細胞質という異なる領域を一つの変数で表し、それぞれの領域における蛋白質の動態を同時 に考察する数理モデル化に成功した。このモデル化によって、現在一つの層でし か可視化できない実験技術の限界を多層で同時に見る事ができる数理モデルで補充する事ができると考える。このモデル化には、Phase-field法を柱とした。Phase-field 法は、二つの安定なフェイズ(例えば、1と0)を連続関数で表現し、その2 相間の界面の動きを簡単に作り出す事ができる数理手法である。それにより、高次元空間における複 雑なパターン形成であっても、通常のラティス上での陽的解法で簡単にシミュレートする事ができる。 ここでは Phase-field 関数の特性を応用し、二つのフェーズを細胞外と細胞内と定義、その薄い界面を 細胞膜として捉えた。細胞は種類によって様々な形を持ち、細胞組織では空間密度によって 変形などもしばしば伴う。また、細胞の形は細胞接触におけるシグナル伝達に大きな影響を及ぼす可 能性があるため、細胞の形を自由自在に表現する事は本研究において重要なポイントである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞の形が固定されている場合においては、数理モデル化を成功し、細胞の形や大きさがパターン形成にどのような影響を与えるのかを、Notch-Delta系で調べることができた。また、その結果を論文としてまとめることができ、国際ジャーナルに受領された。
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今後の研究の推進方策 |
細胞が固定されている場合における現在のモデル化を細胞外のモルフォーゲンのパターン形成モデルへと拡張を行う。 そして、細胞の幾何学的構造を入れた場合、細胞外の分子のパターン形成に細胞内の分子の動態がどのように影響しあうのかを考察していく。さらに、それらの相互作用によって細胞内の遺伝子発現の時間が細胞外のモルフォーゲンのパターン形成にどのような影響を及ぼすかを考察・解析して行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の計画のうち、学会の招待講演において先方からの支援が多かったので、一部研究費が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
海外の研究者との研究推進に使用する。
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