非対称細胞分裂は初期発生において細胞の多様化を生み出すもっとも重要な仕組みの一つである。注目すべきは細胞分裂の前に母細胞が自ら持つタンパク質を左右非対称に分布させる極性形成が、非対称細胞分裂全体のプロセスを左右する中枢的な役割を果たすことである。線虫の初期胚では細胞膜でPARタンパク質が極性を作ると同時に細胞質でも様々なタンパク質が左右非対称に分布する。その時、細胞質でのタンパク質の極性は細胞膜のPAR極性の位置において同位相を形成するもの(MEX-5/6)があれば反位相を形成するもの(PIE-1)が存在することが知られている。それぞれの細胞質タンパク質が極性を形成する基本的な仕組みは実験である程度明らかになっているが、上流の極性であるPAR極性との相互関係についてはまだ分かってないことが多く、特に下流にある細胞質の極性の位置関係とその決定の仕組みについては全く明確ではなかった。 本研究では、その仕組みを数理モデルを構築し、数学的に基本となる構造を発見することに成功した。また、その結果を厳密に証明することまで成功した。
|