研究課題/領域番号 |
16K17645
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
平尾 将剛 愛知県立大学, 情報科学部, 准教授 (90624073)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 行列式点過程 / 準モンテカルロデザイン系列 / 球面アンサンブル / 調和アンサンブル / モンテカルロ法 / 準モンテカルロ法 / cubature公式 |
研究実績の概要 |
初年度の課題は,近年,J.S. Brauchart らにより導入された d次元単位球面上の準モンテカルロデザイン系列の新たな確率的生成法を提案することであった.準モンテカルロデザイン系列とは球面上の積分に対して準モンテカルロ法のアイデアを適用したものであり,より高速な誤差の収束を実現する球面上の点列のことである.この課題に対して,代表的な行列式点過程である球面アンサンブル,及び調和アンサンブルに着目し,これらの点過程により球面上に配置された点集合での数値積分値と真値との最悪誤差の評価を行うことにより,次の(1), (2)の結果を得ることに成功した.これらの結果については現在,学術論文としてまとめ投稿中である. (1) 2次元単位球面上の滑らかさ s (1 < s < 2) のソボレフ空間に対し,球面アンサンブルにより生成される球面上の点列が準モンテカルロデザイン系列を生成する(すなわち,最適な誤差の収束性を達成する点列を生成する)ことを示した.(2) ある次数までの多項式から生成されるベクトル空間の再生核から定義される行列式点過程(調和アンサンブル)を用いることにより,d次元単位球面上の滑らかさ s (d/2 + 1/2 < s < d/2 + 1) のソボレフ空間に対し,通常のモンテカルロ法より誤差の収束性が良い球面上の点列が生成できることを示した. さらに数値計算を通じ,他のいくつかの球面上以外の行列式点過程に対して,同様に誤差の収束性が良い球面上の点列が生成できることを確認している.さらに研究遂行の中で当初想定していなかった新たな応用課題も見つかっており,今後順次検討していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】に記載した内容について,国際会議(The MCQMC Conference 2016)を含む数件の口頭発表を行った.また,得られた成果については学術論文としてまとめ投稿中である. 当初,調和アンサンブルは,d次元単位球面上の滑らかさs (d/2 < s < d/2 + 1) のソボレフ空間に対して,準モンテカルロデザイン系列を生成すると考えていたが,そこまで示すことが現状ではできていない.今後,解決すべき課題である. また,当初の予定とは別に組合せ論的,または統計的問題に関わる幾つか課題も研究の中で見つかった.今後,これらも検討していきたい.
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今後の研究の推進方策 |
・【現在までの進捗状況】で述べた,d次元単位球面上の滑らかさs (d/2 < s < d/2 + 1/2, s > d/2 + 1) のソボレフ空間に対する最悪誤差の評価を,今後,J. マルツォ氏(バルセロナ大)とともに共同研究する計画を立てている. ・これまでは代表的な2つの行列式点過程のみを扱ってきたが,今後はより一般の行列式点過程(例えば,isotropic projection kernelにより定義される行列式点過程など)についての考察を行う. ・組合せ論的,または統計的問題に関わる幾つか課題についても今後,上と並行して検討を行う. ・【研究実績の概要】であげた球面以外の多様体上における理論的考察をはじめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より低価格でワークステーションを購入したため.また,出張の一部を次年度以降に変更したため.
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次年度使用額の使用計画 |
旅費の一部として利用する.
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