研究課題/領域番号 |
16K17655
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
堀田 英之 千葉大学, 大学院理学研究科, 特任助教 (10767271)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 太陽 / 乱流 / 熱対流 |
研究実績の概要 |
スーパーコンピュータ京を用いて、対流層全体を4兆3000億点で解像する計算をおこなった。太陽の磁場は対流層内部で乱流的なダイナモ運動によって生成されていると考えられているが、その発現である黒点は表面で観測される。太陽対流層深部の熱対流は1ヶ月ほど20万kmほどの時間空間スケールを持つのに対して、表面では数分1000kmほどの時間空間スケールを持つ。このように内部と表面が時間・空間スケールが非常に大きく違うために数値計算による再現は非常に難しい。音速抑制法を用いた手法で、非常に効率化したコードを作成し、この難問へ挑戦した。音速抑制法では、計算のボトルネックとなる、全体通信を必要としないために、大規模計算機を有効に使えるという利点がある。2016年度には、京コンピュータでの計算コードの効率化をおこなった。とくに計算を重くしていた、流束制限関数について、アルゴリズムを見直して、20%ほどの高速化が可能になった。また通信部分については抜本的にアルゴリズムを見直した。その結果、京コンピュータ全体を使った計算が可能になり、京コンピュータ全体を使って、世界最大の流体計算である、4.3兆格子点での数値計算を実行した。今回の計算では、アメリカのグループから太陽表面の計算データをもらい、表面でその計算結果に近づくように緩和関数を使った。太陽表面で観測される1000 kmほどの熱対流が再現できており、目的に近づいているといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算コードの開発はほぼうまくいっていると考えている。対流層の底では、1ヶ月程度の熱対流が支配的であるが、太陽表面では、数分程度の熱対流が活発になっている。このギャップを埋めるためには、効率的なコードを用いて、大規模計算機で並列化する必要がある。その準備は2016年度の取り組みでほぼ終了したと考えていい。京全体である82944ノード(663552コア)を99%以上の並列効率というほぼ理想的なスケーリングを示している。また、実行性能も24%を超えるものが実現できており、世界的に見ても非常に効率的なコードを開発することができた。太陽表面の取り扱いについても、習熟が進んでおり、その意味で、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度では、アメリカのグループの計算結果を用いて、その状態に近づくような緩和関数を用いて計算をおこなったが、2017年度にはより現実的な放射機構を表面部分の計算に取り入れる予定である。すでに状態方程式に必要なテーブルは共同研究者からもらっており準備はできている。この状態方程式から求めたオパシティーを用いて、放射輸送方程式の解析解を用いた手法を利用する予定である。この手法を用いた数値計算について、2次元から始めて、2017年度中には3次元の大規模計算でのテストまでを行う予定である。2018年度には、これらを全て含めた計算で、磁場の浮上を計算する。初期に磁場を設定し、表面で黒点ができるところまでを計算する予定である。その計算により、どのような条件で黒点ができうるかを議論する予定である。
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