最終年度ではIa型超新星の起源を探るために様々な白色矮星の熱核爆発について研究した。1つは二重白色矮星系における白色矮星の熱核爆発、もう1つは潮汐破壊中の白色矮星における熱核爆発である。
まず1つめについて述べる。今回我々が研究した二重白色矮星系における白色矮星の熱核爆発は、白色矮星同士が合体する前に重い方の白色矮星(主星)が爆発するというものである。この場合、軽い方の白色矮星(伴星)は主星の重力から突然解放されるため超高速で運動する。このモデルは近年Gaiaによって超高速白色矮星が多数発見されたことによってIa型超新星の有力候補となった。我々は高解像度流体シミュレーションによってこの爆発を再現し、Ia 型超新星と比較した。生成された元素組成とその分布は大雑把にはIa型超新星の特徴と一致した。しかし、Ia型超新星と整合しない2つの可能性がある。1つは伴星から剥ぎとられた酸素が低速度成分として観測される可能性があることである。もう1つは爆発した主星自身が超高速で運動しているため、これが速度シフトとして反映される可能性があることである。今後の観測は、このようなシグナルの有無を確かめる必要がある。
次に2つめについて述べる。潮汐破壊中の白色矮星の熱核爆発は普通のIa型超新星ではなく、近年多数報告されている特異なIa型超新星となる可能性がある。我々は本研究でそもそも潮汐破壊中の白色矮星が熱核爆発できるのかどうかその可能性を探った。過去の研究でも、潮汐破壊中の白色矮星の熱核爆発は調べられていたが、我々はそれが低解像度からくる偽の爆発であることを前年度に示した。今年度は、我々は十分な解像度のシミュレーションを行い、確かに潮汐破壊中の白色矮星は熱核爆発することを確かめた。また、白色矮星の外層にヘリウムがあれば、より爆発しやすいということも示すことができた。
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