研究課題
前年度までに実施した、原始惑星系円盤の降着加熱に関する非理想磁気流体シミュレーションの結果を論文にまとめ、論文を学術誌に掲載した (Mori, Bai, & Okuzumi 2019)。また、磁気的な降着による円盤の加熱は非効率であるという我々の新しい知見にもとづいて、原始惑星系円盤における氷昇華線の時間進化を理論的に計算した。その結果、旧来の粘性円盤モデルにもとづく理解と大きく異なり、氷昇華線の移動は基本的に中心星の高度の時間進化によって引き起こされること、氷昇華線は原始惑星系円盤が形成してから数十万年のうちに地球軌道に到達するこを明らかにした。このことは、水に乏しい我々の地球が現在の軌道で形成されたのではなく、太陽に近い領域で形成されてから現在の軌道に移動してきたことを1つの可能性として示唆する。さらに、前年度から実施してきたダスト成長と円盤温度進化の同時シミュレーションをより体系的に実施し、ダスト進化の傾向を詳しく調べた。前年度のテスト計算から、氷昇華線の外側では円盤表面に中心星の光が当たらない「影」が形成され、これによって氷昇華線の外側のガス温度が著しく低下することまでを突き止めていた。このような環境でのダストの成長を長時間にわたって追跡したところ、氷昇華線より外側のダストが中心星へ落下するよりも速く成長し、微惑星を形成することを発見した。これは、円盤温度が低下したことによって、ダストの落下を引き起こす円盤ガスの圧力も低下したことによる。このような微惑星形成のメカニズムはこれまで知られておらず、本研究でダストと氷昇華線の連動した進化を考慮したことによって初めて明らかになったものである。以上の研究成果は日本天文学会2018年秋季年会で発表済みであり、さらに2019年内の論文化を目指している。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件) 学会発表 (20件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
The Astrophysical Journal Letters
巻: 874 ページ: article id. L6
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The Astrophysical Journal
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http://www.geo.titech.ac.jp/~sokuzumi/