研究実績の概要 |
申請者らがこれまで構築した銀河核ガス円盤のモデルに、降着円盤および銀河核ガス円盤からの輻射を考慮することで、銀河核ガス円盤の幾何学構造とブラックホールへのガス降着率へ与える影響について調べた。その結果、銀河核ガス円盤の幾何学構造は、ブラックホール質量、活動銀河核の光度、ガス円盤の密度に強く依存することが分かった(川勝、和田 2017投稿準備中)。また、アーカイブデータやALMA観測で得られた近傍銀河(NGC1068, NGC1097, NGC3227, NGC4051, NGC7469他10天体)に対する銀河核ガス円盤の物理状態と理論モデルを比較することにより、次のことを明らかにした。具体的には、まず我々はALMA等を用いた高密度ガストレーサーであるHCN分子輝線の観測から、銀河核ガス円盤の質量を推定した。そして、銀河核ガス円盤の質量が銀河中心の活動性と正の相関を持つことが観測的に初めて明らかになった。この相関は、母銀河スケールでのガス観測では見られないものであり、銀河核ガス円盤とブラックホールの成長機構に関連があることを示している。また、文献データから、降着率の高い活動銀河核に付随する銀河核ガス円盤は幾何学的に厚く、逆に降着率の低い活動銀河核に付随する銀河核ガス円盤は薄いという示唆も得た。これらの結果は、我々の理論モデルで予言されているように、銀河核ガス円盤の重力不安定性がブラックホールへの物質降着を左右する鍵となっていることを示唆するものである(泉、川勝、河野, 2016:採択済)。
|