研究課題
申請者がこれまで構築してきた銀河核円盤と超大質量ブラックホール成長のモデルを検証するために、アーカイブデータおよび最新のALMA観測で得られた近傍銀河に対する銀河中心領域の物理状態を理論モデルと比較した。本理論に基づくと、降着率の低い活動銀河核の周りには幾何学的に薄い遮蔽構造が存在することが予想されるが、低光度の活動銀河核NGC1097に対して、ALMAによる高分解能観測をしたところ、幾何学的に薄いガス円盤の存在を明らかにした(泉ほか2017:採録済)。また、この理論モデルを遠方クェーサーの観測結果と比較することで、超大質量ブラックホールの種となるブラックホールの質量や成長時期・過程について調べた(池田ほか2017:採録済)。さらに、パーセクスケールの電波ジェットに対する強い吸収から、超大質量ブラックホール周辺の物質構造を探る研究をスタートさせ、生まれたばかりの若い電波ジェットを持つ3C84に対して、解析を行っている(川勝、輪島、紀:投稿準備中)。また、これまで構築した理論モデルに、降着円盤および銀河核ガス円盤からの輻射の効果を考慮することで、銀河核円盤の幾何学構造とブラックホールへのガス降着率に与える影響について調べた。結果として、幾何学構造はブラックホール質量、活動銀河核の光度、ガス円盤の密度に強く依存することが分かった。これらの理論予想と観測との比較検討を行っており、現在学術論文にまとめているところである。
2: おおむね順調に進展している
輻射の効果を取り入れた理論モデルの拡張に関する研究は当初よりもやや遅れているが、最終年度に実施予定であった電波ジェットの吸収を用いて、中心核構造を探る研究は予想より早く成果が出ており、全体としては順調に進んでいる。
輻射の効果を取り入れた理論論文の投稿を急ぐとともに、コンパクトな電波ジェットを用いて、大質量ブラックホール周辺の物質構造を探る研究の土台を確立する。
(理由) 校務により当初予定した研究会への参加がかなわなかったため。(使用計画)研究課題に関する国際会議(ウィーン:オーストリア)への参加費の一部に使用する予定である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 5件)
The Astrophysical Journal
巻: 843 ページ: 82-94
10.3847/1538-4357/aa7336
巻: 845 ページ: 5-12
10.3847/2041-8213/aa808f
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