研究実績の概要 |
今年度は、昨年度に実施したブラックホール X 線連星の円盤風の駆動モデルと実際のデータの比較研究についての成果を、共同研究者の Durham 大学の Chris Done 教授とともに論文にまとめた。この研究では、熱駆動型円盤風(降着円盤外縁部のガスが、内縁部からの強い X 線放射を受けて加熱されることで駆動される円盤風)モデルに基づいて吸収線のシミュレーションを行い、Chandra 衛星による観測で実際に得られた吸収線の形状と非常によく一致することを発見した。この結果についての論文は、Astrophysical Journal (ApJ) 誌に受理され、2019年11月に出版された (Shidatsu & Done, 2019, ApJ, 885, 112)。 さらに、昨年度に引き続き、全天 X 線監視装置MAXIを用いてブラックホールX線連星の光度変動の監視を行った。その結果、新たなブラックホールX線連星を複数発見し、また、2018年に発見された MAXI J1820+070 の再増光を検出することができた。MAXI J1820+070 については、2018 年の増光中に、ヨーロッパの研究チームによって、可視光帯域で、円盤風による吸収線の存在が報告されていた。そこで、再増光中の吸収線の有無とその時間変化を調査するため、京都大学せいめい望遠鏡を用いて 2019 年 4-5 月, 2020 年の 2-3 月に分光観測を実施した。今回の観測では吸収線は検出できなかったが、降着円盤の表面から生じたと見られる、強い水素の輝線を検出することができた現在、京都大学の共同研究者らとともにこの成果に関する論文を執筆している(Yoshitake et al. in prep)。
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