研究課題/領域番号 |
16K17674
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
中島 真也 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (20737449)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | X線天文学 / 天の川銀河中心 |
研究実績の概要 |
本年度はすざく衛星で取得した天の川銀河中心の観測データを用いて、射手座A*から見て正の銀緯方向に広がる高温プラズマを解析、その温度・密度・電離度などを求めた。結果、負の銀緯方向に広がる高温プラズマと比較して、温度・密度はほぼ同じだが、電離状態が異なることを明らかにした。また、高緯度領域のスペクトル解析を行う際には、天の川銀河全体に広がる高温ガスハローの寄与を正しく見積もる必要があることに気づき、すざく衛星のアーカイブデータを用いて高温ガスハローの空間分布を測定、放射強度を示すエミッションメジャーが銀河面から離れるについれて指数関数的に減少することを明らかにした。 上記と並行して、2016年2月に打ち上げたひとみ衛星の軌道上較正作業を行った。初期運用フェイズに取得したデータの一部は、姿勢制御系の較正が完全ではなかっため、これをオフラインで較正する方法を提案・実装し、姿勢決定精度を改善することに成功した。ひとみ衛星に搭載されているマイクロカロリメータ検出器 (SXS) の標準エネルギー帯域は0.3-16 keVであるが、検出器は実際には32keV相当までの信号を記録している。そこで、標準プロセスでは無視されてしまう16-32keVのデータを抜き出す方法を検討し、その手順を確立した。最後に、ペルセウス座銀河団の観測で検出された複数の輝線を使ってエネルギースケールの較正精度を検証した。これらの結果は国内学会・国際学会で口頭発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はひとみ衛星の軌道上較正作業に重点を置いた。そのため、軌道上較正作業は完了したが、すざく衛星のアーカイブデータを用いた天の川銀河中心の広域に渡るスペクトルモデル化作業がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
すざく衛星で取得した天の川銀河中心のデータ解析を重点的に進める。これまでに解析した表面輝度が高い領域のスペクトル情報を参考にして、表面輝度が低い領域も含めて広域のスペクトルのモデル化を行い、物理パラメータの空間分布を導き出す。一方で、ひとみ衛星の事故により、当初予定していたSXSによる天の川銀河中心領域の観測は不可能となってしまったが、初期運用フェースに射手座A*より20度ほど離れた off plane 領域を観測している。そのデータ解析し、銀河中心からやや離れた領域でのプラズマ放射の上限値を求める。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定よりも打ち合わせ出張の回数が少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費および論文出版費用として使用予定である。
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