研究課題
不安定原子核の特徴の一つとしてスキン構造が挙げられる。これは原子核表面に現れる過剰の中性子もしくは陽子の層を指す。スキン構造は不安定原子核の理解にとって重要な特徴であるが、従来の方法では技術的な制限から実験的にスキン厚を測定できる不安定原子核が限られる。反応断面積は原子核の大きさに感度を持ち、特に、反応断面積のエネルギー依存性は核子密度分布の導出にとって有効とされている。これを発展させ、原子核内の陽子と中性子の密度分布を分けることができれば、スキン厚を決めることができる。ここで、核子同士の相互作用はエネルギー領域によって「陽子-陽子」と「陽子-中性子」で異なる。これは反応標的として陽子を用いることで、原子核内の陽子と中性子に対して異なる感度を与えることを示唆する。そこで、本研究では、陽子と中性子の密度分布の分離に向け、固体水素標的(陽子標的)を用いた反応断面積のエネルギー依存性を調べた。対象核種は陽子過剰核17Ne(陽子数10、中性子数7)とした。17Neのスキン厚は既知であり、本手法の妥当性を確認できる。実験は、放射線医学総合研究所のHIMACで行った。平成30年度は、昨年度に比べエネルギーを上げ(核子あたり約400 MeV)、固体水素標的による17Neの反応断面積測定を実施した。その結果、中間エネルギー領域(核子あたり数100 MeV)で、理論値よりも実験値の方が大きいことがわかった。さらに、先行研究を調べると、安定原子核12C(陽子数6、中性子数6)においても、17Neと同様な傾向があった。実験と理論の不一致に関しては現在調査中である。また、本研究では、17F(陽子数9、中性子数8)のデータも測定しており、現在、解析中である。今後は、標的サイズ依存性に注目し、水素標的と重水素標的を組み合わせた測定の検討も進めたいと考えている。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)