研究課題/領域番号 |
16K17680
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
日野原 伸生 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (80511435)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 原子核密度汎関数法 / 対相関 / 線形応答 / 対称性の自発的破れ |
研究実績の概要 |
平成28年度から行っている、原子核の対相関を記述する対密度汎関数の精密化を完了し、対密度の空間微分項と対運動密度項を原子核密度汎関数法コードおよび線形応答理論計算コードに導入した。この拡張にともない、従来より原子核対相関の指標として用いられている対ギャップの理論値と、偶核と奇核の束縛エネルギー差の実験値との対応が悪くなり両者の比較ができなくなるが、対回転の慣性モーメントの理論値と実験値を比較することにより、新しく導入された結合定数も決定できる可能性を議論した。本成果は論文として出版された。 原子核密度汎関数理論におけるエネルギー重率和則を従来のハミルトニアンを仮定した二回交換関係を用いずに導出した。この導出によって、ハミルトニアンと対応がない一般化された原子核密度汎関数での和則の計算が可能となった。特に多重極遷移に関する和則では、密度汎関数の局所ゲージ不変性が重要な役割を果たしていることを示した。平成29年度は、精密化した対密度汎関数を用いた場合、またスピン励起に関する和則の導出を行った。 中性子―陽子対相関の解明に向けては、中性子―陽子混合密度と対密度を持つ、原子核密度汎関数法計算コードHFBTHOをベースに開発を行っている。平成29年度には、中性子―陽子混合がある場合に、線形拘束によって中性子数と陽子数の平均値を拘束できるよう、化学ポテンシャルを決定する計算コードの拡張を行った。この実装によって、基底状態でアイソベクトル型の中性子―陽子対凝縮が起きているかどうかが計算できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中性子―陽子対相関がある場合のラグランジュ未定乗数法による化学ポテンシャルの決定はこれまでの原子核密度汎関数法コードではなされていなかったが、この実装が完了したことで、今後中性子―陽子対相関を含んだ実際的な計算に取り組んでいくことができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
基底状態での中性子―陽子対凝縮の可能性を重点的・系統的に調べる。また、クーロン力のようなアイソスピン対称性の破れがあった場合に対凝縮が起きやすくなるのか、起きにくくなるのかを分析する。アイソスカラー型の対相関や、空間微分項などの対密度汎関数も順次中性子―陽子対相関の計算コードに導入してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は出張が多かったため、物品の購入が当初の予定よりも少なかった。次年度分と合わせて計算機関連の物品費として使用を計画している。
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