研究課題/領域番号 |
16K17681
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
遠藤 基 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (70568170)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超対称性模型 |
研究実績の概要 |
超対称性模型は素粒子標準理論を超える物理理論の中で最も有力な候補であると考えられているが、これまでのLHC実験を始めとする加速器実験でその兆候は見えていない。平成28年度は、高いエネルギースケールにある可能性がある超対称性模型のフレーバー物理における効果を探った。 近年の計算機物理の進展によりK中間子崩壊に関する観測量の理論予言の精度が格段に良くなってきた。とくに、K中間子崩壊におけるCP対称性の破れを表す、いわゆる直接的CP対称性を破れに関する素粒子標準理論による予言値が2015年に発表された。この値はすでに知られている実験値から3シグマ程度の有意さでずれていることがわかった。このずれは超対称性模型の効果によるものである可能性がある。そこで、平成28年度は、K中間子崩壊における直接的CP対称性を破れにおける超対称性模型の効果に関する研究を行った。 K中間子崩壊における直接的CP対称性を破れにおける超対称性模型の効果は、超対称性模型のパラメータの一つであるスカラー3点結合定数が大きいほど強く現れることが知られている。しかし、スカラー3点結合定数が大きくなると我々の存在する真空の安定性が破れてしまう。本研究では、真空が十分に長い期間にわたり安定であることを要請することで、超対称性模型のエネルギースケールが高くても4-6TeV以下になければいけないことを明らかにした。この値は将来のLHC実験では検証できない可能性があるが、J-PARCのKOTO実験でK中間子崩壊を測定することで、将来この超対称性模型を検証できる可能性があることを示した。 これ以外にも、真空の崩壊率におけるゲージ対称性に関する研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の柱の一つであるフレーバー物理の研究を行った。近年の計算機物理の進展により超対称性模型の効果が見えてきた可能性がある。その結果、超対称性模型のエネルギースケールに関して上限が得られた。この値は、将来の加速器実験で超対称性模型を探る際の一つの目安となる重要な結論であり、期間の初期にこのような結果が得られたことは今後の研究を進める上で重要なステップとなる。 一方で、真空の崩壊率に関する研究は成果を発表するまでに至らなかった。平成28年度はこの研究に関して数多くの進展があったが、当初の見込みよりもかなり複雑であることがわかったためまだ議論が詰めきれていない箇所があり、平成28年度中の発表を見送った。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度も引き続きK中間子やB中間子を始めとするフレーバー物理の研究を進めることで超対称性模型の可能性を探る。また、真空の崩壊率に関する研究も進めて研究成果を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね申請通りに使用したが、当初の計画よりも物品費として使用した計算機購入費用を少し抑えた。一方で出張が予定よりも多くなったため旅費が計画よりも多くなった。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度は出張が予定よりも多くなったことから、差額は旅費として使用する。
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