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2016 年度 実施状況報告書

超高エネルギー宇宙線源の現象論的なモデルの構築と検証

研究課題

研究課題/領域番号 16K17685
研究機関東京大学

研究代表者

木戸 英治  東京大学, 宇宙線研究所, 特任助教 (00633778)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード超高エネルギー宇宙線 / 大規模構造
研究実績の概要

まず、実際的な銀河などの天体の密度を模して、宇宙線源の密度が1立方Mpc(メガパーセク)あたりに100万分の1個以上1000分の1個以下の場合に観測される宇宙線の分布をシミュレートした。この時宇宙線源が、宇宙の大規模構造のような分布をすると予想して、銀河カタログ2MASS XSCz中の銀河を使用した。カタログ中の銀河を宇宙線源として宇宙線陽子の伝播計算を行って、データベースとし、その中から必要な情報を引き出すことができるようにした。その後、銀河をランダムに宇宙線源として選んで、宇宙線源の密度を変更できるようにした。
Telescope Array (TA)実験の異方性の解析の結果、57 EeV以上のエネルギーの宇宙線の到来方向にホットスポットが観測されている。57 EeV以上の宇宙線のシミュレーションの結果、80-90%程度の確率でおとめ座銀河団の方向に、ホットスポットのような異方性が観測されることが分かった。ただし、おとめ座銀河団は観測されているホットスポットから90度程度も離れた方向にある。一方で宇宙線の密度を減らしていくと、シミュレートした範囲の宇宙線源の密度に依存して、10-20%程度の確率でおおぐま座銀河団の方向にもホットスポットのような異方性が観測される可能性があることが分かった。おおぐま座銀河団は、ホットスポットからの離角は20度程度である。
今後陽子より重い原子核の混入や、磁場のモデルによってどの程度伝播中に宇宙線が曲げられたり方向が広がったりするのかを検討する必要がある。しかしこの研究から、初めて近傍の大規模構造から到来する宇宙線の分布がホットスポットとして観測されているという物理的な解釈を与えるかもしれない。また宇宙線源の密度や宇宙線源の種類に制限を与えられる可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

TA×4実験の地表検出器の建設が、当初の予定より数か月遅れた。そのために米国への出張期間が長期に及び、今年度予定していた陽子以外の宇宙線原子核の伝播計算、及び宇宙線の到来方向の磁場による偏向のシミュレーションを終わらせることができなかった。

今後の研究の推進方策

まだ伝播計算を行っていない宇宙線原子核について伝播計算を行って、宇宙線陽子同様にデータベースを作る。その際計算機を更に一台購入し、更に速くシミュレーションを行う。また、規則的な銀河磁場とランダムな磁場による、宇宙線の到来方向の偏向をシミュレートする。規則的な銀河磁場については特にJansson & Farrar (2012), Pshirkov et al. (2011)などの論文で発表された、定式化されたモデルを用いる。ランダムな成分についてはガウス分布で広がりを考慮する。その後TA実験で観測されたホットスポットを再現するモデルを構築する。またモデルの構築に使用したデータとは独立に測定されたTA実験のデータで、構築したモデルの検証を行う。更にホットスポット解析のエネルギー閾値である57 EeV以下のエネルギーのデータに対してもモデルからの予測を行い、モデルの検証を行う。
得られた結果を公表するために、6月に行われる実験グループの内部の全体会議で発表を行う予定である。また、結果を宇宙線国際会議(ICRC)で発表するために、ポスター発表を申請中である。実験グループ内部の全体会議で結果が承認されれば、その後も国際会議や論文などの形で結果の発表を行う。

次年度使用額が生じた理由

TA×4実験の地表検出器の建設が当初の予定より遅れたため、米国への出張が3月後半までに及んだ。その後宇宙線の伝播計算を行うための計算機の検討を行い、DELL社のワークステーションを購入するに至った。2台購入する予定だが、年度内にもう一台の購入ができなかった。また、ワークステーションのためのメモリも十分に購入できていない。

次年度使用額の使用計画

DELL社のワークステーションとメモリを購入して、宇宙線の伝播計算に使用する計画である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] TA実験293: TA×4実験全体報告2017

    • 著者名/発表者名
      木戸 英治
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 発表場所
      大阪府豊中市大阪大学豊中キャンパス
    • 年月日
      2017-03-17 – 2017-03-20
  • [学会発表] The TA×4 experiment2016

    • 著者名/発表者名
      木戸 英治
    • 学会等名
      UHECR2016
    • 発表場所
      京都府京都市京都リサーチパーク
    • 年月日
      2016-10-11 – 2016-10-14
    • 国際学会
  • [学会発表] TA実験287: TAx4実験 地表検出器全体報告2016

    • 著者名/発表者名
      木戸 英治
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 発表場所
      宮崎県宮崎市宮崎大学木花キャンパス
    • 年月日
      2016-09-21 – 2016-09-24
  • [学会発表] The extension of the Telescope Array experiment2016

    • 著者名/発表者名
      木戸 英治
    • 学会等名
      ICHEP2016
    • 発表場所
      Chicago, USA
    • 年月日
      2016-08-03 – 2016-08-10
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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