研究実績の概要 |
計算機を購入して、宇宙線が地上で観測されるまでの伝播の計算を行った。宇宙線源は2Mass XSCzカタログ中の銀河として、宇宙線源から放射される5種類の宇宙線原子核(p, He, N, Si, Fe)のエネルギースペクトルは、べき乗則に従うと仮定した。計算結果はデータベース化して、べき乗の傾きαを変更して取り出せるようにした。2017年TA実験では、57 EeV以上の宇宙線の到来方向に観測されたホットスポットを含む天域(北緯24.8度以上、また超銀河面から30度以下)で、エネルギースペクトルのカットオフのエネルギーが他の天域よりも高くなっている兆候を発表した。カットオフの違いを説明するためには、例えば加速限界の異なる特別な天体が必要で、当初計画していたような、単純な宇宙線源のモデルのパラメタを考察することは適切でないことが分かった。TA実験及びその低エネルギーへの拡張であるTALE実験で観測したエネルギースペクトルの、特にsecond knee (0.1 EeV)からankle (5 EeV)の銀河系外起源と考えられる成分を、伝播計算した宇宙線陽子でフィットして、宇宙線源の条件を調べた。宇宙線源の単位共同体積当たりの密度は(1+z)^m (m: 自由変数, z: 赤方偏移, z>Zcで密度は定数) の個数進化をすると仮定した。また、宇宙線が伝播中に磁場で拡散する影響は、1 Mpcのコヒーレント長の磁場の強度Bcを自由変数として考慮した。観測されたエネルギースペクトルをフィットした結果、α=2.38+0.04-0.04,m=3.6+0.2-0.3,Zc=2.1+0.5-0.3が得られた。磁場強度Bcについては、約0.001 nGの上限値が得られた。上記の結果の主な部分は2017年の宇宙線国際会議(ICRC)で発表した。
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