本研究の目的は非球対称原始ブラックホール形成のシミュレーションコードを完成させ,非球対称性の影響を調べ,原始ブラックホールの質量,角運動量分布の見積もり方法を確立し,観測との比較を行うことであった.まず,期間中に物質優勢期の重力崩壊のシミュレーションを行う数値コードを完成させ,学術論文として発表した.また,膨張宇宙における重力崩壊現象についての基礎的研究を行い,複数の学術論文を発表している.これらは原始ブラックホール形成のシミュレーションを本格的に行うための準備である.輻射優勢時のシュミレーションコードは現在作成中で,遅くとも今年度中には完成予定である.シミュレーションコードの作成においては当初の計画と比較するとやや遅れがみられるが,遅れの主な原因は,初期揺らぎの非一様性をピーク統計の言葉に焼き直し,PBH 形成の初期条件につなげる部分についての本質的な問題の解決を優先させたためである.この部分については若手研究(B) の研究計画には含まれていなかったが,研究を進める上でその重要性を認識するに至り,優先的に取り組むことにした.結果として,原始ブラックホール量の見積もり方法における統計的な取り扱いについて,これまで解決されていなかった本質的な問題の解決につながる重要な研究成果をあげることに成功した.我々の提案した原始ブラックホールの見積もり方法は純粋にピーク統計理論に根差しており,また非線形も取り入れられている点で,これまでのざっくりとした慣用的な方法に比べ多くの点が改善されている.結果として,非球対称原始ブラックホール形成シミュレーションコードの作成が後回しになることとなったが,前年度応募により採用された基盤B研究の3年間に引継ぎ,研究を進める.
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