研究実績の概要 |
インフレーションは、観測と整合的な宇宙論的揺らぎの予言を与えることにより、初期宇宙の標準シナリオとしての地位を確立した。一方、インフレーション期には、全ての観測可能な揺らぎは、加速膨張により引き伸ばされて大スケールの揺らぎとなるが、このような長波長の揺らぎの蓄積により、原始揺らぎの相関関数は発散する可能性があることが知られている。(赤外発散の問題)この問題は、インフレーションシナリオの予言能力を失わしめる可能性があり、その正則化を議論することは重要である。本研究では、理論がある種の局所性条件を満たしていた場合には、観測量となる揺らぎの相関関数においては、赤外発散が相殺されていることを示した。また、見かけ上の)赤外発散は、QED, QCDなどの他のゲージ理論においてもその存在が知られている。これらの理論における赤外の問題と、インフレーション宇宙において生成される原始揺らぎの赤外の性質の、類似性と相違点の整理をした。(Tanaka, Urakawa 2017)
2012年7月CERNの大型加速器LHCによって、万物に質量を与えるヒッグスボソンが発見された。ヒッグスボソンの質量は、理論のカットオフスケールに比べて非常に小さいことが知られている。この性質を説明する有力な候補は、ミクロな世界を記述する素粒子理論に対して超対称性を要請することであるが、これまでの加速器実験では超対称性の兆候は見つかっていない。そこで、2015年Kaplanらにより超対称性を保持しない模型において、実験から知られているヒッグス質量を自然に説明する模型が提案された。本研究では、この模型に対する宇宙論的制限を議論した。(Kobayashi, Seto, Shimomura, Urakawa, 2017)
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