研究実績の概要 |
本研究の目的は、最新の宇宙観測を通じて、インフレーション宇宙で生成された揺らぎの分布を調べることにより、超高エネルギーのインフレーション期における物理法則を解明することである。最終昨年度は、下記の研究を行った。 1) 超弦理論では、スピン2以上の重い場の存在が予言されている。これらの場がインフレーション宇宙に存在し、インフレーションを引き起こすスカラー場と相互作用していた場合には、揺らぎに特徴的な痕跡を残すことが知られている。本研究では、スピン2以上の粒子がインフレーション中に生成する原始揺らぎの痕跡は、楕円銀河の形状の、比較的小スケールの観測を通じて探査可能であることを示した(Kogai, Urakawa+ 18)。 2) 一般相対性理論(GR)は、低エネルギー極限における重力現象を非常によく記述する一方で、(繰り込み可能ではないため、高エネルギーの極限では、GRからの変更があると考えられる。本研究では、繰り込み可能な重力理論の候補として知られるHorava-Lifshitz (HL)理論において、インフレーション中に生成される原始揺らぎの性質を調べた。HL理論では、4次元の一般座標変換不変性が破れていることに起因し、GRには存在しない、重力のスカラー自由度が存在することが知られている。この自由度の存在により、原始揺らぎの振る舞いはGRとは大きく異なる可能性が予想された。結果は予想に反し、このスカラー自由度は、非常に一般的な状況において、大きな質量を獲得するため、我々が観測する原始揺らぎには影響をあまり与えないことがわかった(Arai, Urakawa+ 18)。 3) 超弦理論を探査する窓として期待されるアクシオン場の質量スペクトラムを、重力波観測を通じて探査する方法を提案しその観測可能性を調べた (Kitajima, Urakawa+18)。
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