平成30年度は当初の予定の平成29年度までの計画研究を延長して継続した。本研究は、LHC加速器の同じ衝突点で測定を行ったATLAS実験とLHCf実験の2つの測定データを用いてた共同解析を実施するものである。本研究の最終目的は、陽子-陽子衝突のパイオン交換プロセスを用いて、陽子-パイ中間子の衝突の測定を行うものである。しかし、共同解析は両実験の理解からスタートし、共同解析体制の確立、さらにデータ解析から論文投稿までのプロセスと初の試みばかりで当初の予定よりも大幅に時間がかかってしまっている。前年度より、初の共同解析として解析プロセスがシンプルな回折事象のデータ解析を実施しており、平成30年度はこのデータ解析をほぼ完了した。前年度までは、ATLAS実験の中心領域検出器とLHCfのArm1検出器のみを用いた解析を実施していた。本年度は、これを拡張してATLAS実験のミニマムバイアスシンチレータ検出器(MBTS)を解析に加えることで回折事象中の片側回折事象と両側回折事象の2つのタイプの事象を分けて、最前方領域の光子生成断面積の測定結果を得ることができた。またLHCf実験のArm2検出器の測定データを加えることで、統計量の増加と2つの検出器による解析のクロスチェックが可能となった。これらの結果は、両実験内でレビューが進行中であり、完了次第、論文投稿が行われる。このレビューとは平行して、陽子-パイ中間子測定のための解析を進めている。この解析ではLHCf検出器で測定される最前方方向に生成される中性子を用いてパイオン交換プロセスを選別する。回折事象の解析時に共同解析のプロセスはよく確立されたことから、本解析は迅速にすすんでおり、近い将来に結果を公表できる予定である。
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