本研究課題は長寿命荷電粒子をプローブとし、未知の素粒子模型の探査・検証を目的とするものである。最終年度は長寿命荷電粒子の初期宇宙存在量に焦点を置いた。初期宇宙における長寿命荷電粒子は自身が持つフレーバーやフレーバー非保存相互作用の強さに応じてその数密度を大きく変える。また、暗黒物質との質量差にも強く依存する。そのため、数密度をこれらの関数として算出し、長寿命荷電粒子が初期宇宙元素合成に及ぼす影響と合わせて検討することで、長寿命荷電粒子の性質、並びに、その背後の模型の姿が切り出される。現在、長寿命荷電粒子の性質を系統的に分別し、その分別に応じ数密度を総括的に調べ上げている。その結果が出揃い次第、長寿命荷電粒子に課される制限・予言の考察と共に成果をまとめる。 また、今年度、未知の素粒子模型に対する相補的検証として、レプトンフレーバー非保存相互作用の探索に関する研究を複数行った。そのうちの1つでは、偏極ミューオンの活用について丁寧に調べ上げた。ミューオン原子中で偏極ミューオンと軌道電子が2つの電子へ遷移する反応に注目し、相互作用の型に応じて電子運動量が特徴的分布を見せることを明らかにし、論文の形で発表した。また、現在、レプトンと核子の深非弾性散乱を通じたレプトンフレーバー非保存相互作用探索の高精度計算を進めており、将来実験にとって欠かせぬ断面積定式化を近々発表予定である。これらレプトンフレーバー非保存相互作用探索の成果を上述の長寿命荷電粒子の研究と繋ぎ合わせることで、より多角的・高精度な模型検証が可能となる。
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