研究課題/領域番号 |
16K17695
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
平松 尚志 立教大学, 理学部, ポストドクトラルフェロー (50456175)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 宇宙紐 / 宇宙論 / 数値宇宙論 |
研究実績の概要 |
格子シミュレーションコードのベースコードとなる Freja システムからの派生コードとして、超電導宇宙紐モデルの方程式系を実装した Freja_SS (Superconducting String) を開発しました。この Freja_SS を用いて、超電導宇宙紐が衝突すると「結合状態」(組み換えをせずに互いに接着してしまう状態)や「素通り」(組み換えを偶数回起こして結果的に互いを通過してしまう状態)、さらには宇宙紐構造の「崩壊現象」(衝突の衝撃で紐の太さが爆発的に成長していく現象)を起こすことを発見し、これらがモデルパラメータを変えること無く、衝突の速度と角度によって引き起こされるという新しい事実を突き止めました(論文執筆中)。これは、物質場と結合する宇宙紐には、これまで知られていなかったかなりの多様性があることを示しており、他の場と結合するようなより現実的なセットアップの下では、宇宙紐同士の組み換えが当たり前のようには起こらないことを示しています。この事実は、宇宙紐ネットワークの存在可能性自体にも大きく影響を及ぼす可能性があります。 さらにこの Freja_SS をベースに、もう一つのゲージ場と摂動重力場を導入し、全体で複素スカラー場2つ+ゲージ場2つ+重力場となる系を実装した Freja_SE (String Evolution) を開発しました。これによって、これまで知られている殆どの宇宙紐モデルを適用することができます。さらに、Freja_SS では宇宙紐の衝突実験を行うコードでしたが、Freja_SE ではこれに加えて宇宙紐ループの進化計算(調整中)、さらに宇宙論的ネットワークシミュレーションも行うことができ、29年度以降の研究の基礎となるコードとなります。この Freja_SE を用いて、Abelian-Higgs モデルと超電導宇宙紐モデルとで宇宙紐ネットワークのシミュレーションを行い、そこから放出される背景重力波のスペクトルの計算を行いました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度は「超電導宇宙紐モデル」の数値コード Freja_SS を使った宇宙紐の数値衝突実験、およびそのネットワークシミュレーションを行う予定でしたが、これを衝突実験のみとし、ネットワークシミュレーションは、後継のコード Freja_SE で行うこととしました。このコードは29年度に作成する予定でしたが、これを繰り上げて28年度中に開発を行いました。その代わりに、28年度に行う予定だった Freja_SS のハイブリッド並列化を中止し、29年度以降に、Freja_SS の全機能を内包する Freja_SE のハイブリッド並列化を行うこととしました。 このように、開発の順序が入れ替わりましたが、これらのコードを使った応用研究も進めていることもあり、全体としては順調に進展しているものと考えています。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進め方については、現在のところ申請当初の予定から大きく変更する箇所はありません。基本的には、宇宙紐のシミュレーションコードの開発とその応用という形で研究を進めていきます。しかし、開発した当該コードの汎用性の高さから、応用範囲は必ずしも宇宙紐だけにはとどまらず、様々な応用が可能であることが明らかになってきました。そこで、本研究の表題にもある「数値宇宙論」の観点に立ち戻って、周辺分野で当該コードの応用が可能であると判断された場合には、これを新たな研究課題として設定し、推進していくこととします。これによって、コード開発とコードを利用した応用研究との比率が、申請当初よりも応用研究側に比重を置く形になる可能性があります。
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次年度使用額が生じた理由 |
先述した通り、申請当初の予定を変更して、29年度に行う予定だった新しい数値コードの開発を28年度中に行ったため、当初想定していたよりも物品購入や出張旅費に研究費を充当する機会が少なかったことが、繰り越しを生じさせる原因となりました。
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次年度使用額の使用計画 |
コード開発の進捗具合にも依存しますが、28年度に行う予定だったコードの運用のために必要な物品購入と、それを用いて行う応用研究の成果報告のための出張(研究会への参加等)は、29年度と30年度に振り分けて順次遂行していく予定です。
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