• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

数値宇宙論で探る初期宇宙の姿

研究課題

研究課題/領域番号 16K17695
研究機関立教大学

研究代表者

平松 尚志  立教大学, 理学部, ポストドクトラルフェロー (50456175)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード宇宙論 / 修正重力理論 / 宇宙紐
研究実績の概要

1) 微分結合を持つスカラー・テンソル理論には、Vainshtein 機構などの、スカラー自由度の遮蔽機構が必要になります。本研究では、3次の Galileon 理論において、穴の空いた円盤状の物質分布下において、この Vainshtein 機構がうまく働かず、遮蔽すべきスカラー自由度を円盤の中心部で逆に増強してしまう現象を発見しました。これは観測事実と著しく異なるため、円盤という比較的ありふれた非球対称の物質分布において、Galileon 理論のような微分結合を持つ理論を否定できる可能性を示しています。

2) 重力波観測 GW170817 により、重力波の伝搬速度に極めて強い制限が課され、現在知られている最も一般的な重力理論である DHOST 理論に対しても強い制限が課されました。そこで、本研究では、GW170817 の制限を加えた DHOST 理論において中性子星の静的解を求め、その質量ー半径関係を調べました。その結果、現在許されている DHOST 理論のパラメータの範囲内で、一般相対性理論ではあり得ない巨大かつ大質量の中性子星が存在することを分かり、DHOST 理論のパラメータの許容範囲にさらに大きな制限を加えられる可能性を示しました。

3) 宇宙紐に物質場が結合して、宇宙紐上に物質場の永続的な流れを作る宇宙紐を超電導宇宙紐と呼びます。通常の宇宙紐同士が衝突すると必ず紐の組み換えが起こりますが、超電導宇宙紐の場合は、物質場の相互作用の影響で組み換えがうまく起こらない場合があります。研究代表者らはこれを数値的に確かめましたが、本研究ではこれを理論モデルで説明できないか調査しました。その結果、Nambu-Goto 作用を基にした既存の超電導宇宙紐モデルでは、この組み換え現象を正しく記述できないことを示し、超電導宇宙紐を記述する新たなモデルが必要になることを明らかにしました。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請書の年次計画で述べた通り、シミュレーションコードに重力波の計算部を実装し、宇宙紐から生成される重力波のスペクトルを計算できるようになりました。また、コードの汎用性を高めた結果、宇宙紐と同じく宇宙論的位相欠陥の一つであるドメインウォールや、位相欠陥ではないものの宇宙紐等と同様にソリトンとして振る舞うQボールやオシロンといったものへの応用も可能になっており、「宇宙論的スケールに広がるソリトンからの重力波」というようにより包括的な観点から研究を進めることができるようになりました。コードの高速化と並列化の課題は残っていますが、研究の遂行の上で本質的な問題ではないので、30年度から、比較的小さいスケールの計算を対象に運用を開始する予定です。

このように、本研究の根幹を成すコードの開発は順調であり、加えて、超電導宇宙紐の理論モデルに関する論文なども出版されたこともあり、全体としてはおおむね順調に進展しているものと考えています。

今後の研究の推進方策

研究の進め方については、現在のところ申請当初の予定から大きく変更する箇所はありません。基本的には、前年度と同様、宇宙論的ソリトンのシミュレーションコードの開発とその運用という形で研究を進めていきます。また、本研究の表題にもある「数値宇宙論」の観点から、このコードを、位相欠陥には分類されないものの宇宙論的に重要な役割を果たすソリトン(オシロンなど)に関する研究へも積極的に応用していきます。特に、「進捗状況」でも述べたように29年度までのコード開発で重力波スペクトルが可能になりましたが、30年度はこれを活用し、申請書でも述べたように、日本の重力波干渉計 KAGRA や将来計画にある DECIGO などを想定し、こういった宇宙論的ソリトンからの重力波の検出可能性を議論すると共に、そこから得られるであろう極初期宇宙に関する情報を抽出する研究を行っていきます。

次年度使用額が生じた理由

(理由)29年度中はヨーロッパへの渡航を1回分延期したうえ(30年度に履行予定)、開発中のコードのハイブリット並列化の延期のため物品購入が抑えられたことが主な原因です。

(使用計画)コード開発の順序の変更に伴い、29年度に行う予定だった必要物品の購入を30年度前半に行います。また、延期していた海外渡航を30年度に行うため、結果的に、30年度請求分の助成金も合わせ申請当初の予定どおりに研究費を使用する予定です。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件)

  • [国際共同研究] AstroParticule & Cosmologie(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      AstroParticule & Cosmologie
  • [雑誌論文] Y-junction intercommutations of current carrying strings2018

    • 著者名/発表者名
      Steer D.A., Lilley Marc, Daisuke Yamauchi, Takashi Hiramatsu
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 97 ページ: -

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.97.023507

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Relativistic stars in degenerate higher-order scalar-tensor theories after GW1708172018

    • 著者名/発表者名
      Tsutomu Kobayashi, Takashi Hiramatsu
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [学会発表] Dynamical screening of scalar waves in Cubic Galileon model2018

    • 著者名/発表者名
      平松尚志
    • 学会等名
      GC2018
    • 国際学会
  • [学会発表] Vainshtein mechanism for non-spherical matter distribution in Cubic Galileon model2017

    • 著者名/発表者名
      平松尚志
    • 学会等名
      相対論宇宙論 東北研究会 2017
  • [学会発表] Field-theoretic simulations of colliding superconducting strings2017

    • 著者名/発表者名
      平松尚志
    • 学会等名
      COSMO-17
    • 国際学会
  • [学会発表] Gravitational clustering of massive neutrinos around cold dark matter halos2017

    • 著者名/発表者名
      平松尚志
    • 学会等名
      ICG-NAOC-YITP joint workshop, `Next-generation cosmology with large-scalr structure'
    • 国際学会
  • [学会発表] Field-theoretic simulations of colliding superconducting strings2017

    • 著者名/発表者名
      平松尚志
    • 学会等名
      CosPA 2017
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi