1) 非等方な背景重力波を作り出す理論モデルを想定し、これを将来観測計画である LiteBIRD や CMB-S4 でどの程度検出可能であるか、フィッシャー解析を用いて定量的に議論しました。その結果、LiteBIRD では難しいものの、CMB-S4 の世代になれば十六重極成分まで、一定の制限が得られることを明らかにしました。 2) 最も拡張された重力理論である DHOST 理論において、重力場、ダークマター、バリオン、光子、ニュートリノ、そしてスカラー場の線形揺らぎの方程式を全て書き下し、さらにこれらの初期条件の与え方を理論的に無矛盾な形で決定しました。定式化の部分については、現在論文を執筆中であり、本科研費で開発している CMB ボルツマンソルバー CMB2nd への実装も開始しています。 3) インフレーション直後のインフラトン振動期において、インフラトンのポテンシャルの形次第では、オシロンと呼ばれるスカラー場のソリトンが形成されます。このオシロンの寿命の長さ次第で、後の宇宙膨張の仕方が大きく変化してしまう場合があり、その結果、CMB の観測からのインフレーションモデルへの制限が大きく変わる可能性があります。そこで本研究では、様々なポテンシャルを用意し、場の理論的シミュレーションによってオシロンを実際に生成し、その生成量や時間進化の様子、さらに生成時に放出される重力波のスペクトルを明らかにしました。 本研究を通して、場の理論的シミュレーションコードと宇宙マイクロ波背景放射のボルツマンソルバーの開発を行い、さらにそれらを用いて初期宇宙の物理と実際の観測とを結びつける研究を行いました。その結果を6編の論文としてまとめ、将来の重力波観測や CMB B-mode 偏光揺らぎの観測を通して、インフレーションモデルへのさらなる制限、および重力理論そのものへの制限を得ることができました。
|