素粒子、原子核実験分野で広く使われている、高エネルギーガンマ線検出器の電磁カロリメタを新たに開発する。特に高レートの実験 に対応できるよう早い時間応答の良い物として、最近開発されたGd3Al2Ga3O12(Ce) 結晶 (GAGG 結晶) の開発を進める。 最終年度である2017年度は、2) Mg添加物の量を変えた物について、どこまで発光時定数を小さくする事ができるか、またその時の光量を明らかにする、3)時定数の違う結晶を光学接続し、出力波形によるガンマ線、中性子分別の性能評価を行う、を挙げた。 2)に関して、Mgの濃度の変化に伴う光量、時定数の変化については、1 mm厚の結晶を製作し測定を行った。光量はCs線源で光電ピークで測定し、Mgドープによってその減衰を確認した。最大半分程度になるが、ドープ量が0.5%程度で飽和する。時定数に関して波形見ると、GAGGの時間成分は2成分あり、Mgのドープにより長い時定数成分が減衰するように見える。少量でもドープすると大きく変化するが、ドープ量に対しては顕著な違いは見られない。 3)について、今回は10 cm長の、Mgドープなしと1%ドープの2種類の異なる時定数の結晶を繋ぎ、20 cmの結晶を製作した。光学接続にはオプティカルセメントBC-600を使用した。ガンマ線の応答を調べるため、東北大学電子光理学研究センターの200-800 MeV陽電子ビームを用いて性能評価を行った。陽電子ビームを結晶の長手方向に対して平行に入射した際の応答は、モンテカルロシミュレーションでよく再現でき、ガンマ線や陽電子の主な反応である、電磁シャワーをよく理解できることを示した。次に結晶の長手方向に垂直にビームを入れ、各位置毎の波形を測定し、Mgドープなしと1%ドープ結晶位置で期待通り別の時定数の波形を確認し、2種の時定数を持つ大型結晶の開発に成功した。
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