研究課題
本研究ではヨウ化カルシウム(CaI2)を用いて、暗黒物質探索を行うことが可能な新しい高感度シンチレータを開発し、その性能と将来性を評価した。CaI2は発光量が、一般的に使われるNaIの2倍以上という優れた性質をもつが、その潮解性や加工のしづらさから一般的には使われてこなかった。本研究において結晶成長や加工・取り扱いの技術を開発し、NaIに代わる次世代シンチレータとしての実用と、高発光量が求められる暗黒物質探索実験への応用を目指す。実際にブリッジマン法を用いてCaI2結晶の育成に成功し、発光量、透過率などの重要なパラメータの測定を行った。ヨウ化カルシウム(CaI2)結晶は1964年にHofstadterによって発見されNaI(Tl)の2倍の発光量であることが知られているが、本研究でCaI2結晶を作成しNaI(Tl)の2.7倍もの大発光量を達成した。次に劈開性による加工の困難さを克服するため、Iの一部をBrで置き換えた結晶を作成した。Eu2%:CaBr0.5I1.5, Eu2%:CaBrI and Eu2%:CaBr1.5I0.5 についてBS法により結晶育成を行い、Eu2%:CaBr0.5I1.5 、Eu2%:CaBrI の組成について透明性を有する結晶が得られた。これらの結晶はEu2+ 4f5d遷移由来の発光を464 nmに示した。発光量については、Eu2%:CaBr0.5I1.5が最も高く、発光量は95,000 photon/MeV程度と既存のNaIシンチレータに対し2倍以上の発光量を示した。蛍光寿命は1562ns.であった。結晶加工時の感触から劈開性は. CaI2 より緩和されていた。得られた一連の成果は論文としてまとめ投稿した。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
Ceramics International
巻: Vol. 43, Suppl. 1 ページ: 423 - 427
10.1016/j.ceramint.2017.05.249