研究課題
部分電離プラズマ中を伝搬する無衝突垂直衝撃波(磁場の向きと衝撃波法線の向きが垂直)の3次元シミュレーションを世界で初めて行った。衝撃波の下流領域から上流に染み出した水素原子が電離したのち陽子となり、再び伝搬してきた衝撃波と相互作用することで非常に効率よく加速されることを示した。たった100ジャイロ周期程度の間に陽子の運動エネルギーを最高で1万倍にまで加速した。これは、これまでの無衝突衝撃波のシミュレーションの中で、最も高いエネルギーであり、陽子のパイ中間子を生成してガンマ線を放射することができるエネルギースケールである。第一原理的なプラズマ粒子シミュレーションの結果と超新星残骸のガンマ線観測の結果を直接比較する研究の幕開けでる。また、シミュレーションで再現された粒子加速効率は、超新星残骸で宇宙線を1PeV程度まで加速できることを示しており、これまで困難と思われていた1PeVスケールまでの加速が実際に起きうることを示した。これまでは、垂直衝撃波では荷電粒子を衝撃波加速過程に注入することは困難であると思われていた。しかし今回のシミュレーション結果により、部分電離プラズマ中を伝搬する衝撃波の場合は、従来の考え方とは違って垂直衝撃波でも多くの粒子が効率よく加速されることを示した。さらに、下流から染み出した水素原子が電離した際に生成される陽子の強い温度非等方性によって、アルフヴェン波動が励起されること、その非線形性によって衝撃波上流で密度揺らぎが生成されること、それらが衝撃波と相互作用することで、衝撃波下流に強い乱流が駆動され、磁場が増幅することを示した。
1: 当初の計画以上に進展している
予定通り、計算コードの改良が進んだだけでなく、3次元シミュレーションを世界で初めて実行し、多くの新しい発見があった。
磁場の増幅過程は2次元シミュレーションで調べることが可能だが、垂直衝撃波での粒子加速過程は3次元シミュレーションを行わないと調べられないことが判明したため、目的に応じて2次元と3次元をうまく使い分ける必要がある。3次元シミュレーションは、非常に計算コストがかかるため、粒子加速に関するパラメター探査は、当初の予定よりも多くはできないので、電離度依存性のみをまずは調べることにする。
イスタンブールで行われる予定であった国際会議COSPAR2016に出席し、研究成果発表及び情報収集を行うため約35万円を確保していたが、イスタンブールでテロが発生し国際会議の開催が中止になったため。
当初の予定に加えて、次年度に研究成果発表及び情報収集を行うために国際会議に参加する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件)
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