研究課題/領域番号 |
16K17702
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大平 豊 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40589347)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 宇宙線 / 磁場 / 超新星残骸 / 衝撃波 / 初期宇宙 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、初期宇宙での宇宙線加速について理論的に調べた。昨年度は、宇宙線が衝撃波上流に作る磁場を仮定して、宇宙線の加速を議論した。2018年度は、宇宙線が衝撃波上流に作る磁場を見積もることに成功した。加速された宇宙線が衝撃波上流に作る磁場は、ワイベル不安定性を仮定すると、宇宙線が作る電流を評価することで評価することができることに気が付いた。その結果、最初の星が超新星残骸を作る際に、宇宙線陽子がz=20ごろに0.1-3GeVまで加速されることを明らかにした。またその初代宇宙線が、周囲へ広がっていく際に、磁場を生成することができることを明らかにした。最初の星が超新星残骸を作る際に、宇宙線電子の場合は、0.3-3GeV程度まで加速できることがわかった。 同じz=20程度の時期に生じる構造形成に伴う衝撃波は、電離度が非常に低い衝撃波となるため宇宙線を加速することができないことも判明した。z<10の時期になると、構造形成に伴う衝撃波でも衝撃波上流が電離されるようになり、宇宙線を加速することが可能になるが、クーロン散乱によるエネルギー損失が効いて、系から逃げ出す前に宇宙線はエネルギーを失う。そのため、構造形成に伴う衝撃波で加速された宇宙線陽子は、周囲の磁場を増幅したり、周囲を加熱したりと周囲に影響を与えることができないことも明らかにした。一方宇宙線電子の場合は、クーロン散乱によるエネルギー損失が無視できるため、4MeV程度まで加速され、周囲に影響を及ぼすことができることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標とする、初期宇宙での宇宙線加速についての理論的研究の成果があった。また、宇宙初期の宇宙線による磁場の生成機構についても新しい機構を発見した。一方で、それらの成果を論文にすることと国際学会発表ができなかった。これらを総合して、概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
論文を執筆し、国際学会発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、研究成果を論文として投稿中である。出版社への投稿料の支払いが2019年度になる。また2019年度には、本研究成果を発表する為に、アメリカで開かれる国際会議に参加する。以上の理由により、補助事業期間を延長する。 助成金の使用用途は、論文の投稿料と国際会議の旅費と参加費である。
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