平成30年度の研究では、昨年度から継続して研究を行っている「超新星におけるカイラル物質の電磁乱流」について、研究成果を論文にまとめて学術雑誌に出版し、国内外の研究会・会議で発表した。同時に、超新星コアで実現すると考えられるニュートリノ流体について、「カイラル渦効果」と呼ばれる輸送現象や流体ヘリシティの効果を含む乱流の解析を行い、系の回転の大きさを変えることで、乱流の振舞いがどのように変わるかを議論した。(この研究については、現在も解析を継続している。) また、粒子がカイラリティの自由度をもつ開放系において、どのようなパターン形成が生じるかを調べた。その結果、粒子のカイラリティに起因するカイラル輸送現象によって、従来の反応拡散系のパターン形成(チューリング不安定性)とは異なる新しいタイプの不安定性が存在し、それがヘリカル構造をもつパターン形成を引き起こすことを明らかにした。 さらに、外部磁場中のQCDにおいて、パイ中間子のカイラル輸送現象に関する新奇な物理現象を探索した。カイラル対称性が自発的に破れた相では、パイ中間子がカイラル輸送現象と量子異常によって光子と結合する結果、無質量の非相対論的な励起状態が現れる。この励起状態が、高次対称性の自発的な破れによる非相対論的なNambu-Goldstoneモードとして理解できることを、理論の代数的構造のみに基づいて示した。まだ、このような励起状態のDirac半金属における実現可能性についても議論した。
|