研究課題/領域番号 |
16K17708
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
藤澤 幸太郎 早稲田大学, 理工学術院, 日本学術振興会特別研究員 (30732408)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マグネター / 中性子星 / 強磁場の進化と起源 / ホール効果 / 両極性拡散 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、強磁場中性子星マグネターの磁場を様々な物理過程を用いてモデル化することで、マグネター磁場の進化を議論し強磁場の起源に迫ることである。マグネターの強磁場の起源としては様々な物理モデルが考えられているが、本研究では古典的で最も広く受け入れられているマグネター内部の荷電粒子によって強磁場が生み出されていると考える。するとマグネターの磁場は、荷電粒子同士の相互作用によってオーム散逸、クラスト部分でのホール効果、コア部分での両極性拡散によって進化していくと考えることができる。そこで本研究では、これらの物理過程を取り込むことでマグネターの磁場進化計算を行い、実際に観測されているマグネターの磁場進化を説明できるかどうかを議論する。 初年度である今年度は、まずは現象論的なモデルを用いて観測される磁場減衰が説明可能かどうかを議論した。従来の現象論的なモデルはマグネターの磁場を1つのモデルで取り扱っていたが、実際のマグネター磁場は主にコア磁場とクラスト磁場の2成分からなっていると考えられる。それぞれクラストではホール効果とオーム散逸、コアでは両極性拡散が支配的なメカニズムとなって磁場が進化していくと考えることができる。そこでホール効果とオーム散逸によって進化していくクラスト磁場と、両極性拡散によって進化していくコア磁場の2成分からなる、マグネターの磁場進化のシンプルな現象論的なモデルを新しく作成した。その結果、観測されているマグネターの磁場減衰を説明するためには、従来広く考えられていたクラストのホール効果だけでは不十分であり、両極性拡散によるコア磁場の減衰が特に必要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、強磁場中性子星マグネターの磁場を様々な物理過程を用いてモデル化することで、マグネター磁場の進化を議論し強磁場の起源に迫ることである。そこで本年度は、まずは従来の現象論的なモデルを再構築し、コア磁場とクラスト磁場の両方を考慮した新しい現象論的なモデルを構築した。その現象論的なモデルを用いることで、実際に観測されているマグネターの磁場の減衰を説明するためにはコア磁場の減衰が重要であることを明らかにした。そこで次年度以降は、当初の計画通りに両極性拡散に支配されているコア磁場の詳細な進化計算を行う予定である。このように本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終的な目的は、強磁場中性子星マグネターの磁場を様々な物理過程を用いてモデル化することで、マグネター磁場の進化を議論し強磁場の起源に迫ることである。初年度は新しい現象論的なモデルを作成するし計算を行うことで、両極性拡散によるコア磁場の進化計算がマグネターの磁場進化にとって重要であることが明らかになった。そこで次年度以降は、このコア磁場の両極性拡散による詳細な進化計算を行っていく。 現在のところ、マグネターコアにおける両極性拡散による磁場の詳細な多次元進化計算を行った例はない。そのため基礎方程式から出発し、定式化及び数値計算スキームの開発を行う必要がある。またさらにコア磁場を考えるためには、コアの冷却・加熱過程も重要となってくるため、磁場計算と熱進化計算の両方を考慮する必要がる。この定式化と数値計算スキームの開発は現在世界中の様々な研究者が取り組んでいるが、まだ誰も成功していないものであり、この作業は非常に困難であることが予想されている。そこでこのような定式化と数値計算を成功させるために、千葉工業大学の安武氏と共同でこの作業にとりかかる予定である。すでに頻繁に研究打ち合わせを行っており、今後は定式化と数値計算コード作成、テスト計算の実行を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、参加する予定であった国内研究会に参加するのをやめて、次年度の研究の準備に当てていた。そのため多少の予算が次年度使用額として残ってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降は、本研究の研究成果を海外で開催される国際会議などで広く発表していく予定でである。この次年度使用額は、その国際学会に参加するために旅費として用いる予定である。
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