本研究の目的は、強磁場中性子星マグネターの磁場を様々な物理過程を用いてモデル化することで、マグネター磁場の進化を議論し強磁場の起源に迫ることである。マグネターの強磁場の起源としては様々な物理モデルが考えられているが、本研究では古典的で最も広く受け入れられているマグネター内部の荷電粒子によって強磁場が生み出されていると考える。するとマグネターの磁場は、荷電粒子同士の相互作用によってオーム散逸、クラスト部分でのホール効果、コア部分での両極性拡散によって進化していくと考えることができる。そこで本研究では、これらの物理過程を取り込むことでマグネターの磁場進化計算を行い、実際に 観測されているマグネターの磁場進化を説明できるかどうかを議論する。 三年目である本年度は、前年度に引き続きコアでの両極性拡散による磁場進化の定式化に主に取り組んだ。先行研究ではコア磁場のもを考慮した計算を行っていたが、本研究ではコアとクラストの両方磁場を考慮して両極性拡散の計算を行った。その結果、コアの外側にあるクラスト磁場の構造がコア磁場の両極性拡散速度に影響を及ぼすことが明らかになった。このことは、コア磁場の進化を考える時でも、クラスト磁場が重要であることを示している。 一方で、数値計算で最も大事になってくる数値計算スキームに関しても大幅な進展があり、これまでとは異なる新しい数値計算スキーム、W4法の開発に成功した。この新しい数値計算スキームは従来の数値計算スキームに比べ収束性が非常に良く、この数値計算スキームを用いることで効果的に磁場の進化計算を行うことが可能となった。この数値計算スキームの詳細に関しては査読付き国際誌に投稿し、出版されている。
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