研究課題/領域番号 |
16K17709
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
水野 俊太郎 京都大学, 基礎物理学研究所, 研究員 (60386620)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 宇宙物理 (理論) |
研究実績の概要 |
本研究は計画の段階では、「Equilateral型の非ガウス性に対する大規模構造からの制限(課題1)」、「CMBに含まれる振動的微細構造と微分結合を含むインフレーションモデル(課題2)」、微分結合を含むインフレーションモデルからビッグバン宇宙への移行(課題3)」、「ホルンデスキ重力理論の拡張に基づく暗黒エネルギー(課題4)」を具体的なテーマとしていたが、課題1と課題4については昨年度に計画達成の目処が立ったため、課題2、3の微分結合項に関連しているインフレーションモデルの研究を優先させた。その結果、このテーマに関連して超弦理論的状況設定で双極型空間へのコンパクト化を通じてhyperinflationという興味深い予言を与えるインフレーションモデルが得られること、密度揺らぎのスペクトルにおける振動的微細構造を説明する微分結合項による量子もつれを伴うインフレーションモデルが得られたことは大きな成果である。また、この分野においては3年前に重力波が検知されたことを受け、インフレーションのような初期宇宙の情報をえるために重力波が非常に有用な手段となることが期待されている。その意味で、課題3として京都大学の研究者を中心として議論をし、重力子がインフレーション中には質量もち、現在までにその質量がなくなるという単純なシナリオにおいて、原始重力波が近い将来に検出される可能性があることを示すことができたのは予想以上の成果であったと思われる。ただし、上述の研究は大きな方向性としては計画していた項目の範疇であり、いずれも興味深い研究であるものの、計画の段階では以前の私の研究と直結したテーマを設定した。今年度については新しく始めた研究の可能性を見極めるのを優先したため、計画の段階で設定していた研究が準備段階にあり、総合的に判断すると「(2)おおむね順調に進展している」の区分になるものと思われる
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は計画の段階では、「Equilateral型の非ガウス性に対する大規模構造からの制限(課題1)」、「CMBに含まれる振動的微細構造と微分結合を含むインフレーションモデル(課題2)」、微分結合を含むインフレーションモデルからビッグバン宇宙への移行(課題3)」、「ホルンデスキ重力理論の拡張に基づく暗黒エネルギー(課題4)」を具体的なテーマとしていたが、課題1と課題4については昨年度に計画達成の目処が立ったため、課題2、3の微分結合項に関連しているインフレーションモデルの研究を優先させた。その結果、このテーマに関連して超弦理論的状況設定で双極型空間へのコンパクト化を通じてhyperinflationという興味深い予言を与えるインフレーションモデルが得られること、密度揺らぎのスペクトルにおける振動的微細構造を説明する微分結合項による量子もつれを伴うインフレーションモデルが得られたことは大きな成果である。また、この分野においては3年前に重力波が検知されたことを受け、インフレーションのような初期宇宙の情報をえるために重力波が非常に有用な手段となることが期待されている。その意味で、課題3として京都大学の研究者を中心として議論をし、重力子がインフレーション中には質量もち、現在までにその質量がなくなるという単純なシナリオにおいて、原始重力波が近い将来に検出される可能性があることを示すことができたのは予想以上の成果であったと思われる。ただし、上述の研究は大きな方向性としては計画していた項目の範疇であり、いずれも興味深い研究であるものの、計画の段階では以前の私の研究と直結したテーマを設定した。今年度については新しく始めた研究の可能性を見極めるのを優先したため、計画の段階で設定していた研究が準備段階にあり、総合的に判断すると「(2)おおむね順調に進展している」の区分になるものと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
課題2で述べた双極型空間へのcompact化をもとにしたインフレーション(hyperinflation)は背景場と場の線形摂動のダイナミクスの解析が完了した段階なので、非線形摂動まで考えてこのモデルにおける原始非ガウス性から新しい制限が得られるか、また課題3と関連してこのモデルで再加熱を考えたときに場の空間の曲率が負になっている効果が粒子生成にそのような影響を及ぼすかについては調べてみたい。課題2で述べた微分結合項を起源とする量子もつれをともなうインフレーションモデルの研究については、原始密度揺らぎの計算は完了していて現在論文にまとめている段階である。次のステップとして、CMBの温度揺らぎのスペクトルにどのような振動的微細構造が現れるのかを定量的に評価したい。 また、初期宇宙に量子もつれが存在していたときに初期密度揺らぎの振幅だけではなく、他の観測量からそのもつれの有無を判別できないかについても考えていきたい。当初課題2として考えていたのは以前私が行った複数場をもつインフレーションモデルで背景場の進行方向がインフレーション中に急激に変化するものを超弦理論の設定で導出するものであった。現時点においてはD-ブレーンのような微分結合は現れないものの、αアトラクターモデル[Kallosh, Linde, `13]を複数場に拡張したモデルで振動的微細構造をもつスペクトルが得られるところまでは示しており、現在論文にまとめている段階である。次のステップとして、それをD-ブレーンを含むモデルに拡張したい。課題3で述べた重力子の質量が変化するモデルからの背景重力波のスペクトルは有効場理論に基づいた解析は完了して現在論文にまとめている段階である。次のステップとして有効場理論のアプローチではなく、具体的な理論モデルが得られるかについて調べたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)消耗品などが安価に抑えられたため、30年度に予算を持ち越した次第である。 (計画)平成30年度に持ち越した予算については、消耗品の購入に使用する予定である。
|