最終年度として、これまで進めてきたE11対称性を用いた研究と、F理論のブレーンに関する研究を、さらに深めていった。 E11対称性の研究に関しては、前年度までの成果として、アインシュタイン方程式を少し変形したような式を、E11の代数構造のみを使って導出したが、今年度は両者を一致させる導出方法を見つけた。また、その議論の中で、M理論に登場するブレーン解、さらにインフレーションを起こすなど、宇宙論に応用できるような解について、議論を行った。 F理論については、前年度までの成果として、重力相互作用によって比較的強く相互作用しているブレーンの系を扱い、その熱力学的な性質を簡単に捉える方法を提唱し(スープ描像)、いろいろな系に応用してきた。今年度は、その重要な例として、F理論のブレーンの系を扱った。ブレーンを超重力理論の解として捉えると、F理論のブレーンでは一部の(ディラトンの)結合定数に虚数が現れることが知られており、物理的な描像を掴むのが難しいと考えられてきた。本研究では、そうした現象に今までとは異なる解釈を与えることで問題を回避した上で、ブレーン系の熱力学的な性質を議論した。 さらに、発展的な研究として、標準模型で重要な役割を果たす繰り込み群について、最近注目を集めている機械学習との関係を議論した。前年度までの成果として、イジング模型のスピン配位を白黒画像として表したものを機械学習させることで、機械学習の特徴抽出と、繰り込み群の関係について議論してきた。今年度は、熱力学的な視点を入れることで、その関係について詳しく議論を行った。また、サイズの小さなスピン配位を考えることで解析的な計算を行い、その解析結果と機械学習の結果を比較することで、さらに理解を深めることができた。
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