重い W' が存在する場合、ヒッグスセクターが拡張される。 特に two-Higgs doublet model がCP対称性を尊重した形で出てくることは初年度に示した通りである。そのような模型は、暗黒物質の直接検出実験の制限を逃れる模型に採用されており、第3年度には THDM+a 模型において、これまで正しく評価されていなかった暗黒物質と核子の散乱断面積を正しく評価した。最終年度には、この模型をより精査した。具体的には、ヒッグスポテンシャルの安定性、摂動論的ユニタリティーといった理論的制限を考慮してパラメータ空間をスキャンし、その上で第3年度に得られた公式を用いて暗黒物質と核子との散乱断面積結果を評価することで、将来の暗黒物質の直接検出実験で模型が検証されるかどうかを徹底的に調べた。結果として、XENONnT実験およびLZ実験でこの模型は十分検証されうることを明らかにすることができた。このことは近い将来にこれら実験で暗黒物質が検出された際にはこの模型をベンチマーク模型として提供できるという意義がある。 また、電弱対称性をさらに拡張することで W' に加え、スピン1の暗黒物質が導入される模型を構築した。この暗黒物質は他のスピン1の暗黒物質粒子と異なり、標準模型のゲージボソンと直接結合する。模型はくりこみ可能なために予言能力も高い。フェルミオンセクターも標準模型と同程度に簡素である。模型は将来のコライダー実験や暗黒物質の間接検出実験、で検証できる。結果はプレプリントで公開しており(arXiv:2004.00884)、現在雑誌に投稿準備中である。
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